壁の隙間から射す、細い光。

 時折訪れては慰めてくれる動物達。

 

 それだけが、彼の全てだった。

 

 昔には、抱き上げてくれたあたたかな手もあったような気もするが…記憶には無い。

 

 言葉は…言葉は世界が教えてくれた。

 

 射しこむ光が、震える雪が、迷い込んで来た花びらが。

 彼に、慈しむという言葉を教えてくれた。

 

 

 人間は、悲しみだけを遺して…彼の中から消えていった…。

 

 

 今はもう遠い、寂しい記憶…。

 

 

 





 

 

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