その日の事は、永遠に忘れない…。










 長い冬が明け、春らしい陽気に人々が漸くその背をしっかりと伸ばして微笑を浮かべる頃。

 空は蒼く、雲は白く、森や山はどこまでも柔らかな緑を湛え、水は冷たく美しいことを何一つ知らずにいた…誰よりも幸せで、誰よりも哀しい生き方をしていた、あの頃。

 そんな時に彼は私の前に現れた。

 冷たく広い宮殿の中、多くの者に囲まれながら自分が独りきりであったことを気づかせてくれた彼。

 世界を護り、世界を救い、何よりも世界に愛されていた…祝福された存在。

 そう信じて疑いもしなかった…愚かな自分。



 許して欲しいなんて言わない。

 分かって欲しいとも、思わない。

 ただ、信じて欲しい。

 何も分かっていなかった。

 何も知ろうともしなかった。

 だけど、それでも…誰よりも何よりも、君のことが大切だったんだ。

 例え君の心を裏切ったとしても、君を護りたかった。

 本当にただ、それだけだったんだ。




 この声が君に届かなくなったとしても…。




 この世の誰よりも、君を想っているよ。










 私の救世主…。