んじゃこりゃぁ―――――………

 んじゃこりゃぁ――――……

 んじゃこりゃぁ―――…

 




 

 

 太一の悲痛な悲鳴が辺りに木霊する中、子供達は身動き出来ずに彼女の動向を見守っていた。
 かける言葉は見つからず、呆然と己の胸元を見詰める太一は、真っ青を通り越して色が無い。
 空に命令されるがままに後ろを向いてしまった男性陣は、見えない向こうが気になって仕方が無い。

「………ふっ、夢か」

 太一は苦く笑いながら瞳を閉じた。

「ちょっ、太一!?」

「ほーら、アグモン〜vぱふぱふ〜vv」
「何ぃ?太一〜???」

 太一がアグモンを抱きしめて、その谷間に押し付ける。

「何やってんのよ!?太一ぃ――っ!!」
「いいんだよ、夢なんだから。はっはっは―っ!」
「太一苦しいぃ〜っ」
「ていうか、あんた、生乳でっっ!!」

 パニック絶好調の空が、現実逃避爆走中の太一を嗜めようとするが、効果は無い。

「ヤマトさん、振り向こうとしましたね?」

 ヒカリがにっこりと音も立てずに近付いて囁いた。

「いや、そのっ、アグモンに…っ」
「『なりたい』なんてベタなことは言いませんよね?」
「もちろんです!はい!」
「皆も、後ろ向いたまま、座禅でも組んでいて下さい」
「はい…」

 言い知れぬ圧迫感と殺気を感じた一同は、大人しくヒカリの言葉に従い、総勢四名の煩悩の具現者と約一名の子羊で座禅を組んで目を閉じた。
 ここに丈でもいれば、受験に受かるありがたいお経の一つでも詠んでいたかもしれないが、生憎このメンバーの中で己の欲望を昇華出来る精神力のある者は、いない…。
 目を閉じて浮かぶのは…押してしかるべし。
 その証拠に、揃いも揃って顔が耳まで真っ赤だった。

「いーから、アグモンを離しなさぁ――い!」
「嫌だ――っ!夢だから何したっていいんだ――っ!」
「太一さん落ち着いて!アグモンに胸押し付けたって減りませんよ!?」
「たぁいぃちぃ〜〜???」
「ほら、アグモンだって苦しがってるじゃない!!」
「嫌だ嫌だ嫌だ――――っっっ!!!」
「お姉ちゃん、折角のバストが崩れちゃう〜っ!」

 そんなに簡単には崩れません。
 まるで、アグモンが最後の希望の掛け橋であるかのように、頑固にしがみつく太一。 

「ああっ、もうっ!京ちゃんっ、ヒカリちゃんっ!!」
「「はいっっ!」」

 べりっ!

 

 ぷるんぷるんぷるん……

 

 太一を空とヒカリで後ろから羽交い絞めにし、その隙に京がアグモンを奪取した。
 その衝撃で、露なままの太一の乳房がステキな効果音と共に空気を振動させる…それを見て、京は真っ赤になり、空の中では何かが切れた。

 

「どーでもいいから、その乳隠せ―――っっ!!」

 

 肩で息をし、据わった瞳で太一を見据える。
 そんなにコンプレックスだったのか?

「…………どーやって?」

「……え?」

 困惑したような複雑な顔で、太一は女性陣を順に見回す。

 確かに、少女漫画でよく見られる両腕を交差して隠す方法は抵抗がある。左右それぞれの手で隠すのも、何か嫌だ…。
 男と生まれて十四年。胸を隠したことも、隠そうとしたことも無い太一には、どの方法も抵抗があって、どちらかと言えば、今己の胸に触ることすら…怖い。
 そして、頼みの綱の服は、先程太一本人が力任せに引き裂いたせいで、ボタンかがりの所が裂けてしまい、見るも無残な有様だった。

「……………」

 仲間達と自分の胸を交互に見比べ、大きな溜め息を一つ…途方にくれるって、こういうことだろう。

「と、とりあえず、服をこうして…」

 空が太一のシャツの裾を摘み上げ、スカーフを結ぶ要領でたくし上げる。
 それで何とか胸のガードは出来たのだが、今度はウエスト全開へそ出しルックになってしまった。

「あ、お姉ちゃん、ウエストも細くなったんじゃない?ズボン下がっちゃって…ベルトもう少しきつくしたら?」
「…お、お姉ちゃん!??」

 太一の喉がひくりと鳴った。
 そんな感傷的な太一の腰を、またもや空ががしっと掴んだ。

「空っ!??」
「……………ほっ…そぉ〜…」
「は!?」
「ホントだぁ、太一さんウエスト細〜い♪」
「ねぇ〜v元々細かったんだけど、更に細くなってるもんね〜v」

 うら若き乙女達が、頬寄せ合って太一のウエストを凝視する…何だか動いてはいけない気分になって、太一は居たたまれなくて仕方が無い。
 実の所、本当は泣いてしまいたかった…。

「何よ、このスタイルは!?あんた、あたしに喧嘩売ってる!?」
「喧嘩売ってんのは、そっちだろーがっ!」

 流石にキレた太一の叫び声に呼応するかのように、天空に数条の雷光が閃いた。

「…あ」

 次の瞬間、琵琶湖をひっくり返したような、見事な土砂降り。

「……そーいや、雨降るって」
「話してたんだったわよ…ね」

 あまりの事態にすっかり忘れていたが、元々は雨が降るから避難しようとしていた所だったのだ。

「…あのぅ〜、もう振り返ってもいいっスかぁ〜?」

 打ち付ける雨にへろへろ状態のブイモンを抱きかかえた大輔が、遠慮がちに手を上げた。

「あ、いいわよ〜。太一さんの秘蔵の双翼は封印したから」
「そうですか…」

 男四人の背中に『がっかり』という文字が見えるのは気のせいだろうか…。デジモン達は、何だかもう真っ直ぐにパートナーの目を見られなかった。
 唯一まともな伊織は、アルマジモンにしがみついたまま立ち上がろうとしない。
 彼の体にこの雨は、そうとう重たいようだ。

「ふっ…ふふ…」

 雨から身を庇うことも馬鹿らしく、降られるがまま濡れ鼠になっていた子供達の耳に、地を這うような笑い声が届く。

「ふふふふふふふふふ…」

「た、太一!?」
「…オレは今日、ダークタワーを倒しに来たんだよ…」
「そ、そうだな。その通りだ」
「デジタルワールドに来る以上、敵と戦ったり傷ついたりするのは、まぁ当然だよなあ?」
「そ、そうですね。覚悟の上ですよね?」

 雨のカーテンの向こうから、鈍く光る太一の目が見える。
 ぶち切れている…。

「なのに、なんで雷に打たれたり、女になっちまった上に雨に打たれなきゃなんねーんだよっ!?」

 怒りの爆発と共に、太一がずいっと一歩を踏み出した。

 

「アグモン!進化だ!!」

 

 デジヴァイスが進化の光を放ち、アグモンがオレンジ色の光に包まれる。

「うわ―――っ!ちょっと待て太一ぃ―――っっ!!」
「太一さんっ!進化はっ!今進化するのだけはっっ!!」
「え?なんで?」
「太一は今、本当の太一じゃないのよ!?そんな状態で進化させたらっ!!」
「それって、もしかして!?」
「ま、間違った進化の…」
「それって、すっごくまずいんじゃ!??」

 青ざめる一同の脳裏に、最強最悪の暗黒デジモンの姿が浮かぶ…。
 その存在感と恐ろしさは、はっきり言ってディアボロモンやアポカリモンも目では無い…加えて今の太一の状態では、デジタルワールドの一つ位憂さ晴らしに簡単に滅ぼしてしまいそうだ…そんなことは無いと信じてはいるが…信じてはいるけれど…!

「やぁだ、皆心配性なんだから♪大丈夫よv」

 ヒカリがにっこり笑って仲間達を振り返る。
 彼女の自信の根拠は一体何なのか…そんな彼等の見守る中で、アグモンが進化を終えて立ち上がった。

 

「…………………」

 

 見慣れたフォルム。
 鎧に鬣、そしてその両腕には最強の武器、ドラモンキラー。

「……ウォーグレイモン?」
「…ウォーグレイモンですね…」
「…正しい進化ね」
「…正しい進化です」
「…究極体??」
「……のよう…です、ね…???」

 現れたデジモンを呆然と見上げる子供達…。
 この上なく正しい進化を遂げ、究極体にまでなってしまったウォーグレイモンが、どうにも腑に落ちない。
 そんな中、ヒカリだけは嬉しそうに太一に声援を送っている。

「……ウォーグレイモン」
「分かった太一…ガイアフォース!!」

 太一の声に、必殺技を繰り出すべくエネルギーを頭上に集中させて行く。

「………あ………」

 誰かが呆然と呟いた。

「…………………ハート型……」

 

 

「…撃て」

 ウォーグレイモンから放たれたハート型のガイアフォースは、部厚い雨雲を蹴散らし空の彼方へ消えて行った。
 雨は止み、散り散りになった雨雲の向こうから、青空と太陽が顔を覗かせた。
 残った雨粒が光を反射し、大輪の虹が空にかかる。

「わぁ〜v」

 子供達がそれを見上げ感嘆の声を漏らすと、地上に降り立ったウォーグレイモンがぽんっとコロモンの姿に戻って太一の腕の中に飛び込んだ。

「…お疲れさん」
「えへへ〜♪」

 太一に褒められて、コロモンは嬉しそうに太一に擦り寄る。
 その感触はいつもと随分違い、弾力の溢れるものだったが、コロモンにはあまり関係が無い。

 一転して穏やかになった太一の様子に、一同は揃って視線を向けた。

「あ〜〜、すっきりした!」

 がくり。

「どうした、皆?」

 ストレス発散のデモンストレーションだったことが分かり、本気で世界の危機かと心配した面々は、振り向いた太一に曖昧な笑顔を返すしか無かった。

「?…ま、いーや。今日は疲れた。ヒカリ、テイルモン、帰るぞ?風呂入りて〜」
「うん♪」

 雨水を大量に含んだ髪をかき上げながら、あっさり言い放った太一にまたしても空気が凍る。

「ちよっ、太一!?あなたまさか、その格好のまま帰る気!?」
「そーだよ?」
「って、待てって!お前今自分の体のこと分かってるか!?」
「ああ、女になってんだろ?もーいーよ、それは。仕方ねぇ、受け入れた。何だヤマト、触りたいのか?」
「えっ……v」
「って、バカなこと言ってんじゃないわよ!太一!!」

 どげしっと、空の美脚がヤマトの後頭部を渾身の力を込めて蹴り飛ばした。

「あんたも喜んでんじゃないの、ヤマト!って、そこっ!何期待してんのっ!!」
「あはは、嫌だな空さん。僕らは別に…ねえ?」
「そうそう、別に」
「あはははは〜…」

 元サッカークラブのツートップは伊達じゃない…。
 誤魔化し笑いで難を逃れた三人の向こう側、吹っ飛んだヤマトが半端でない痛みに、ただただ衝撃が過ぎ去るのを待って堪えていた。

「だけど太一。おば様に何て言って説明するの?やっぱり色々まずいんじゃない?」
「あ〜いーよ、母さんは結構そういうトコアバウトだし。何たってデジモン受け入れた人だし」
「そりゃぁ…そうかも、しれないけど…」
「大丈夫だって、心配するな」
「そう?でも、お風呂入りたいって…どうするつもりなの?」
「う…」

 流石に深くは考えていなかった。

「大丈夫大丈夫♪私が一緒に入って洗ったげるv自分の体見たくなかったら、お姉ちゃん目隠ししてればいいよ」
「あ〜、もう頼んじまおーかな〜」
「うん♪任せてv」

 ちょっと待て、本当にそれでいいのか?
 空はちらりと後ろを見ると、もうそろそろ出血多量で死にそうな馬鹿達が視界に入る。
 一緒に入るのはお前達じゃないだろう…。

「………分かった。でも、太一。明日は一緒に買い物に行きましょうね?」
「へ??」

 言葉の意味を測りかね、太一はきょとんと空を見返した。
 そんな表情をすると文句無く可愛い美少女で、つい一瞬見とれてしまった。

「んもう、『へ?』じゃないの!男と女は色々違うし大変なのよ?いつ戻れるか分からないんだし、一通り揃えてあげるから」
「えぇ〜!?」
「文句言わないの!ヒカリちゃん、もちろん一緒に行くでしょ?」
「はい♪」
「京ちゃんはどーする?」
「当然、ご一緒させて頂きます♪」
「あんた達も暇なんでしょ?荷物持ち位しか役に立たないんだから、来なさいよ」

 空が男共に視線を投げ、冷たく言い放つ。
 今日は特に彼等の馬鹿さ加減を目の当たりにしすぎて、どうも言い方がきつくなってしまう。
 ヤマト達も、太一の荷物持ちなら否やは無いが、高圧的に言われると反抗の虫が騒ぐ。

「そう言われても…」
「突然のことだしなぁ〜…」

「…そう。じゃぁいいわ。皆で適当なナンパ男捕まえて、荷物持ちしてもらうから♪」
「賛成〜v」
「いい考えですねv空さんv」

 さっさと引いた空と女子の言葉にギョッとする。
 そして、彼等を置き去りにして計画が一気に膨らんでいく。

「すまん!行く!一緒に行かせてくれっ!」
「あ〜ら、別に無理して来てくれなくて結構よ?優しくて頼れる人はたくさんいるんだから〜」
「いやいやいや、い〜ませんよ、そんな人!」
「そうそう!荷物持ちだって、店の案内だって、僕等以上に頼れる人なんてねぇ!大輔君!」
「当ったり前ですよ!虫よけもガードもまっかせて下さいって!!」

 必死に食い下がる男達は、彼女達の瞳が獲物を狙う狩人のごとくきらりと輝いたことに気づいていない。
 気づいたのは太一だけ…だが、教える気はさらさら無い。スケープゴートは多い方がいいのだ…こんな時は。

「やっぱり顔良くて〜お金持ってて〜、使いっぷりのいい人かなv」
「それに、優しくなくっちゃ〜v疲れたら飲み物奢ってくれたり〜v」
「甘いもの奢ってくれたりね〜v」

 男達を無視して盛り上がる少女達。
 彼等を蚊帳の外に追い出して、自分達だけの世界を作っているようで、実はある一定の方向へと彼等の思考を誘導していた。
 あと一息の状態に、彼女達の演技にも熱が入る。

「太一はどんな人が好み?」

 爆弾投下。

「「「「何でも奢る(ります)!!!」」」」

 っしゃ!!

 望み通りの言葉を導き出すことに成功し、してやったりと彼等に見えない場所でガッツポーズ。
 背中から見え隠れする子悪魔なしっぽに、太一はそっと溜め息をついた。
 『買い物』がからんだ時の女には決して逆らってはいけない…女傑の妹と幼馴染を持つ太一は、そのことを骨の髄に染みるまで、よ〜く心得ていた。

「んじゃ、帰ろーぜ〜」
「「「は―い」」」

 太一の合図でゲートが開かれ、中学生組はパートナーと別れの挨拶をしてモニターに吸い込まれていった。

「…アグモン、どうしたの?」

 モニターの前から動かないアグモンに、ガブモンが不思議に思って声をかけた。

「うん…あのさ…」

 言いよどむアグモンの周りに、ピヨモンやテントモンも集まって来る。
 何事かと神妙な顔つきのアグモンの顔を覗き込む…そして、やっと言葉を見つけたらしいアグモンが顔を上げた。

 

 

「太一…エンジェウーモンみたいだったよね?」

 

 

 ぽん。

 

「ああ!どっかで見たことあると思ったら!」
「そっかぁ〜エンジェウーモンねぇ〜!なぁ〜んかひっかかってたのよねぇ〜!」
「わてもですわ!謎が解けましたわ!」
「よかった〜、やっぱりそうなんだよね?」

 わっと笑い合うデジモン達。
 彼等は彼等なりに考えていたらしい。

「…で、あれって進化なの?」
「…さぁ、よく分かんない」
「……ヤマトが怒られてたのは分かった…」
「光子郎ハンもでんな…」

 顔を見合わせ首を傾ける。

 エンジェモン・エンジェウーモン・デビモン・レディデビモンというデジモンが存在しても、彼等に性別の有無は分からない。

 

 

 

 

「ただいま〜」

 特に構えるでも無く、八神兄妹は普通に玄関を開けた。

「あらあら、お帰りなさい。遅かったわね〜…あら!どうしたの?三人ともずぶぬれじゃない!?」

 台所から顔を出した母は、濡れ鼠の子供達を見ると慌ててタオルを取りに奥へ消えて行った。

「はい。しっかりふいて家に上がるのよ?テイルモンちゃん、自分でふける?」
「あ、はい。大丈夫です」

 とはいうものの、爪付き手袋は少々勝手が悪い。

「無理しないの。こっちいらっしゃいv」

 くすくすと笑って軽くテイルモンを抱き上げる。
 テイルモンはどこか照れくさそうに、大人しく抱かれるに任せている。

「………あら?」

 母の手が止まり、大きく目が見開かれる…。

「………太一。その胸どうしたの?今朝出かける前までは無かったわよね?」
「…知らね。デジタルワールドでついて来た。その内消えるだろ?」
「あらあら、本当に変わったことが起こる所ねぇ〜」

 母は呆れた様に呟くと、テイルモンを抱いたまま、さっさとリビングの方へと行ってしまった。

「………どーよ、あの反応…」
「まぁ、お母さんらしいって言えば、らしいよね」

 今は姉妹となった二人は、拍子抜けしたように顔を見合わせる。
 それでも、もうちょっと何か違う反応が帰って来てもいいと思うのだが…。

「だけどさぁ〜…」
「信じてるって、ことじゃない?」

 ヒカリが太一の瞳を覗き込みながら、悪戯っぽく微笑んだ。
 本当は、見た目などどうでもよいのだ。彼が無事で、笑っていてくれさえすれば…。

「…そっか」
「そうよ♪」

 何となく暖かい気分で仲良く微笑み合った時、奥から母の声がした。

「太一〜ヒカリ〜!ご飯の前にお風呂入って温まってらっしゃい〜!」
「「はぁ〜い!」」

 二人は急いで自室に向かい、用意をして風呂場に向かった。

「テイルモンちゃん、先にご飯食べる?」
「いえ、ヒカリ達を待ってます」
「そお?きっと時間かかるわよ〜?」
「?」

 意味ありげな視線と言葉をテイルモンに向け、母は台所へと向かった。まるで、全て見通しているかのような不思議な感覚。
 いい匂いと一緒に鼻歌までテイルモンの所に流れてくる。
 ご機嫌な様子に、現在の状況との間のギャップに首を傾げながら、残された言葉の意味を考えようとした時。

 ガタ―――ンっ!!

 風呂場から聞こえた音に、びくりとテイルモンが反応する。

「お姉ちゃん!お姉ちゃんっ!?」

 聞こえるのはヒカリの声…何事かと腰を浮かせた時、くすくすと楽しそうな笑い声が聞こえた。

「テイルモンちゃん、行って来てくれる?」
「あ、はい!」

 ひょいっとソファから飛び降り、真っ直ぐに浴室へ向かう。
 その時ちらりと目に入った彼女の顔は嬉しそうに微笑んでおり、届いた言葉は本当に楽しそうだった。

 

「その程度で倒れてたんじゃ、『女』はやっていけないわよ、太一v」

 

 静かに浴室の扉を開け、中に滑り込む。
 テイルモンは見てはならないものを見てしまった気分だった。

 彼女は、普段物事にあまり動じない息子がうろたえるているのが、真実楽しいらしい。

 

 





 八神母…太一とヒカリはこの人から生まれたのだと、心の底から納得してしまった一時だった。

 





つづく(笑)


 ライジング・バグ第二話でした〜(笑)
 すみません、まだ続きます…次は買い物編ですが、
 そろそろ止めておきましょうか?(笑)
 男性陣揃いも揃ってへたれ街道まっしぐらですから
 な…困ったもんだ(おい)
 続きが気になる人は投書しましょう(笑)