翌朝、ヤマトはいつもの場所で太一に会えなかった。
 太一だけでなく、いつも合流するメンバー誰一人として会えなかった。





 嫌われたかな〜…と、四年続いた片思いの果てに、やっと実った恋の儚さを走馬灯のように思い出す。
 例え太一が許してくれても、周りの…特にあの妹は、二度と自分を太一に近づけてくれなさそうな気がしてならない…そこまで考えた時、重々しい足音と共に一つの影が自分に重なった。

 誰だろうと顔を上げかけ…。

 カシンっ…!

 小気味良い音の後、真っ二つに分断された缶ペンとシャーペンや色ペンだった物がばらばらと彼の机の上に散らばった。

「………」

 一拍置き、それをしてのけたであろうナイフが机に刺さった。

 朝の喧騒に賑やかだった教室は、し――んと静まり返っている。
 恐る恐る顔を上げると、先程脳裏に浮かんだ顔が、何の表情も浮かべず自分を見下ろしていた。

「ヒ…ヒカリちゃん…」
「おはようございます、ヤマトさん」

 にっこりと微笑んだ顔は、鼻面にナイフを突きつけられているような恐怖を錯覚させた。

「理由を聞かせて頂きましょう」
「り、理由!?」

 机に刺さったままのはずのナイフが、やけに大きな存在感を伴ってヤマトの精神を襲う。
 背中を伝う汗は、紛れも無く死の恐怖というものを伝えてくる。

「女性の頬を殴り、泣かせた挙句、その後電話も無く、直接来るでも無く、一晩たった今でも何の音沙汰も無く、謝罪すら無い理由です」
「そっ、それは…」
「どんな経緯があろうと、女性に手を上げフォローもせずに放って置く、その心境を聞きにわざわざ三年の教室まで出向いて参りました」

 わざと『姉』では無く『女性』という言葉を使い、世間一般の常識に照らし合わせる様に投げかけられる言葉に、ヤマトは返すものが無かった。

「……お姉ちゃんは、あなたが来てくれるのを…ずっと待ってました」
「…!」

 太一は、待っていたのだろうか…開かれない扉を開けて、自分が迎えに来るのを…。
 昨日は空が、本当は追いかけて欲しかったはずだと言っていた。
 太一本人に聞くまでは、真実がどうかなんてことは分からない。しかし、もしかしたらそうなのだとしても、自分はいつも、人に言われるまでその可能性にすら気づかない。

「…ちなみに、空さんと光子郎さんとタケル君は、流石のあなたでも行動するだろうとうちのマンションのエントランスにいました」
「…………」

 彼等ですら気づいていたというのに…。

「…何もおっしゃらないということは、姉との関係を切りたいと思っても、いいんですね?」
「!…ヒカリちゃんっ!」
「別に言い訳が聞きたかったわけじゃありませんでしたけど、あなたは言い訳すらおっしゃらない。行動を起こすわけでも無かった。…今からなんて虫の良いことは言わないで下さい。誰かに言われなければ、お姉ちゃんの気持ちにすら気づかない。その程度の認識で姉が一番大切だなんて言わせません。そんなあなたに姉は任せられません…二度と会わないで頂きます」
「ヒカリちゃんっ!…君は、行けば合わせてくれたのか!?」
「姉が望めば…。私は今まで、あなた方の交際を反対した覚えはありません」

 言葉に詰まり俯くヤマトを、どこまでも冷たい、鋭い視線が容赦無く射抜く。

 確かに、偽装交際の時はもちろん、本当に付き合いだしてからも不満そうな声やデートの邪魔等はしても、別れさせられそうになったことや、それに続く不穏な発言だけは一度も無かった。
 きっと、これもそれも…彼女の最愛の姉、太一が望むことだったから…。
 たくさんの好意に見守られながら続いていた関係…。
 自分一人の力でも、太一と二人の力で成り立たせていたわけでも無かった。

 ヒカリが出てくれば、太一に二度と会わせてくれないかもしれない。

 これはついさっき自分で考えていたことだ。
 それが、現実味を帯びて来た途端、急に怖くなった。
 これから先、やっと掴んだ手をずっと手離して生きていく…その仮定の未来が、何て頼り無く、何と恐ろしく感じることか。

「…何をすればいい?どうすれば、太一に会わせてくれる!?」
「…今更ですか?」
「今更でも何でも、オレは太一を手離したく無い…!」

 机に頭を擦り付けんばかりに下げ、最後のチャンスを請う。
 見栄もプライドも無かった。
 集まる周囲の視線も関係無い。
 全ては気づけなかった自分の浅はかさが原因なのだから。

「…では、そのナイフを貸して差し上げます」
「…え?」

 ヒカリの言葉に頭を上げる。
 その瞳はまだ、深海よりも冷たく澄んでいた。

「誠意を見せて下さい。小指の一本でも切り落とせる位の」

 教室の空気がざわりと揺れる。

「それが嫌なら、そのナイフで私を倒して行けばいい。お姉ちゃんに会うための一番の障害は私でしょう?どちらでも、お好きな方をご自由に」
「………」

 ぴんと張り詰める空気の中、ヤマトはゆっくりとナイフを手に取り引き抜いた。

「…小指一本でいいんだな?」

「石田!?」
「石田君!?」

 遠巻きに見守っていたクラスメイト達が、ヤマトに駆け寄ろうとする。
 この中には、昨日の太一との諍いを目撃していた者もいただろう…だからこそ、ヤマトは側に来られる前に目で制してその動きを止めた。

「色々支障も出るでしょうし、根元からだと切り難いでしょうから、第一関節まででよろしいですよ」
「…それはどーも」

 慌てる級友達とは対照的に、落ち着き払ったヒカリの姿。

「…約束は守れよ?」
「もちろんです」

 頷いた真剣な瞳に、今一番会いたい瞳が重なった。
 あの瞳が自分を待っている…それだけで、恐怖は嘘のように消え去った。
 握った指にフィットする形のナイフの柄…一気に体重を乗せ、落とす。

 周りで悲鳴が上がった。

 ゴツッ……!

 

「………え?」

 

 机に当たったのはナイフの柄だけ。
 呆然と、痛みも無く繋がったままの指を見つめる。
 刃は…指に当たった所だけ、まるでゴムのようにぐにゃりと曲がっていた。

「…ありがとうございます。…その覚悟が欲しかった…」

 顔を上げると、先程とはうって変わった…嬉しそうな笑みが見返していた。
 ヒカリはそっとヤマトの手からナイフを外すと、変わりに可愛らしいキーホルダーのついた鍵を握らせた。

「うちの鍵です。…お姉ちゃんは、一歩も動けずに家にいます。…姉を、姉をよろしくお願いします…」

 心配そうな視線を窓の外に送り、そして深々と頭を下げた。
 ヤマトは鍵を握り締め、顔を上げたヒカリの微笑みに背中を押された。
 やることも望みも、一つしかない。

「ありがとう、ヒカリちゃん!」

 荷物もそのままに走り出したヤマトを見送り、ヒカリはそっと溜め息を零した。

「お疲れ様、ヒカリちゃん」
「タケル君。…ホント、世話の焼ける人達よね」

 くすりと微笑んで、傍観を決め込んでいた彼の弟を見る。

「仕方ないよ。お兄ちゃん『超』がつく鈍感だもん」
「タケル君は結構聡いのにね」

 実の兄に対するあまりな評価に、ヒカリは楽しそうに相槌を打つ。
 その表情に、先程までの冷たさは欠片も感じられない。

「だけど、ホントに指切り落としちゃったらどうしようかなって、少し思っちゃった」
「やだ、タケル君。そんなことしないわよ」
「後始末が面倒だから?」

 その言葉は甚くヒカリのツボにハマったらしく、一しきり楽し気な笑い声を上げた後、太一によく似た、花のような微笑を向けた。

「違うわタケル君。お姉ちゃんが泣くからよ」

 成る程…と思う。

 太一が望んだからヤマトとの交際を容認した。
 太一が泣いたからヤマトを責め、太一が泣くから許した。
 そして、太一のために今、ヤマトを彼女の元へと向かわせた。

 全ては、太一のため。

 きっと、太一のためでなければヤマトに渡したのは本物のナイフだったかもしれない。
 逆に、太一のためでなければ、そこまで非情な面は表に出ることは無いだろう。

 偉大な人だ。

「それじゃ、僕等も教室に戻ろうか」
「そうね。先輩方、お騒がせしましたv」

 にっこり笑って退場して行く一年生の名物カップル…受験を控えた先輩諸君はそれを呆然と見送り…冷静を取り戻すため、覚えたばかりの単語や公式を、ホームルームが始まり担任が入ってくるまで、延々呟いていたという…。











 息を切らし向かった八神家のマンションで、ヤマトは予想通りの顔触れを見つけ、立ち止まった。

 エントランスホールで凭れていた二人は、ヤマトの姿を見つけると溜め息をついて歩いて来た。

「…空、光子郎…」

「遅いわよ、二度目は無いと思ってね?…太一が待ってるわ」
「今度泣かせたまま放っておいたら、絶対に許しません。…言うまでも無いことですが…、それでは」

 二人はすれ違い様にヤマトの肩を軽く叩くと、そのまま学校に向かって行ってしまった。

「すまん…ありがとう…!」

 一度だけ去ってしまった仲間を振り返り謝辞を送ると、今度は振り返らずに太一の元へと向かった。

 鍵を開けるのももどかしく、ようやく開いた扉を勢い良く開ける。

 家に入ろうとして…探すまでも無く見つかった姿に、ほっとするより驚いた。
 太一は、制服姿で靴を履いたまま、その場で膝を抱えてしゃがみこんでいたのだ。

「太一!?」
「…ヤ、ヤマト…?」

 同じように驚きで瞳をいっぱいに開いた太一がヤマトを凝視した。

 次の瞬間、弾かれたように靴を脱いで奥に逃げ込もうとした太一の腕を、一瞬早くヤマトが掴んだ。
 今度こそ絶対に、何があっても離さないように…。

 そして、じたばたと暴れる太一を男女の体力差の優位に立って繋ぎ止め、扉を閉めて鍵をかける。
 あのヒカリに信頼されて鍵を渡されたのだ。何処にいるとも知れない有象無象のストーカー達に、つけ入る隙を与えるわけにはいかなかった。

「太一!」

 強く名前を呼ぶと、太一はびくりとして動きを止め、張っていた肩からも力が抜ける。

「…太一?」

 返事は無い。…ただ、つないだ腕から、彼女の緊張が静かに伝わる。

「太一…こっち向けよ…」

 出来るだけ優しく、脅えさせることの無い様気をつけて声をかける。
 その声音に、太一はゆっくりと、ゆっくりと振り返った…。

「…ヤマト…」
「太一、ごめんな?」
「え…?」
「…痛かったか?」

 振り返った太一に微笑みかけながら、昨日自分が叩いた頬を優しく撫でる。
 添えられた大きな手を、太一は自分の手で押し付けるようにしながらそっと瞳を閉じる。

「…痛かった…心の方が、痛かった…!」
「太一…」

 閉じられた瞳からぽろりと涙が零れ、ヤマトと自分の手を濡らしていく。
 ヤマトの手を両手で包み、縋りつくように言葉を紡いだ。

「…ごめん…ごめんなさい、ヤマト…オレ、酷いこと言った…」
「太一…いいんだ。オレが無理矢理言わせたようなものなんだから」
「違う、違うんだ!」

 ふるふると頭を振った拍子に、涙が周囲にぱらぱらと零れ落ちた。
 それに、困ったようにヤマトは、残った片手で太一の涙をそっと拭き取る。

「ヤマトがバンドやってるのが嫌なんじゃ無い…かっこ悪いなんて、思って無いっ…オレ…」

 言葉に詰まり、ただ涙だけが後から後から、溢れるように零れ落ちる。
 ヤマトはじっと、太一が次の言葉を言うのを待っていた。

「……オレっ、…ヤマトが、女の子に囲まれてるのを見るのが…嫌だったんだ…っ!」

 搾り出すように言われた告白に、ヤマトは驚きを隠せない。

「頑張ってるヤマトが好きなのに…変わろうって努力してるヤマトを好きになったのに…っ、なのにオレは、他のたくさんの女の子の前で、ラブソング歌ってるお前なんて…見てられないんだ…っ!」
「……太一」
「ごめん、ヤマト…ごめん…!……お願いだから…」

 涙に濡れた顔を隠すように、それでもヤマトを離せないとでも言うように、震える手がぎゅっとヤマトの腕を抱きしめる。

「……オレを…嫌わないで…!」

 初めて聞いた、太一の本音。
 それは、震えるほどに嬉しくて、泣きたくなるほど切ない告白だった。

「太一…太一。ほら、顔上げてオレを見ろ」
「ヤ…マト…?」
「オレの目を見ろ。お前は言ったな?目を見れば、嘘か本当か分かるって…」
「……うん…」
「じゃあ、見ろ。泣いてないで…しっかりと見極めろ」

 抱き込まれている腕ごと、しっかりと太一の顔を包み、目線を合わせる。
 自分は、太一と違って真実を見極める目など持っていない…だからいつも迷って、周りに迷惑もかけ、そして、背中を押されて初めて前に進むことが出来る。
 だが、今は太一の言葉と心が、染み渡るようによく分かる。
 太一の瞳に映る自分が、嘘をつくことなど有り得ない。
 そんな自分は許さない…だから。

「…太一が好きだ」

 たった一人の前でだけ、絶対に嘘をつけない自分でありたい。
 そう思わせてくれる、目の前の誰よりも愛しい存在。

「太一が好きだ。ずっと好きだった…これから先の、未来まで…ずっとだ」

 見開かれた瞳から、大粒の涙がヤマトの手を伝い落ちた。
 それが、まるで太陽が生まれる瞬間のように…。

「……ありがとう…ヤマト…」

 その微笑こそが、ヤマトの一番の宝物。そして、それを自分が導き出せたということこそが、彼の一番の誇り。

「…大好き…!」

 心が満ちていくのが感じる。
 幸せとは、こんな瞬間のことを言うのだろう。
 この瞬間を永遠のものにするためになら、どんな努力も惜しまない。

 ヤマトは、幸せと言う言葉と共に、最愛の人を抱きしめた。













 鐘が鳴り、しばらくすると…軽やかな足音を立てて、彼の恋人が扉の向こうから顔を覗かせた。

「ヤ〜マト♪屋上でお弁と食べよv」
「手作りか?」
「うん♪ヒカリと早起きして一緒に作ったんだv」

 愛らしい微笑を浮かべる彼女に、いそいそと向かうヤマト。
 日常化したこの光景に、級友達は諦め半分、憧れ半分…そして少なからぬ切なさを込めて彼等を見守る。
 幸せを絵に描いたような二人の様子に、冷やかす気力は既に無い。

「…い〜なぁ〜…」
「八神のお手製弁当かぁ〜…」
「石田のむっつり助平めぇ〜〜っっ!」
「えっ!?ヤマト君、むっつり助平なの!?やだ、太一ちゃんが危ないっ!」
「平気よ、石田君にそんな甲斐性あるもんですか」
「………それは、そうかもだけどなぁ〜…」

 怖いお目付け役がいることだし…と、心の中で皆が同じ事を考えたが彼等には預かり知らぬこと。
 それにしても…。

「羨ましいよなぁ〜…」

 級友だけでなく、道行く日人々が同じように溜め息をついていることも、彼等には関係無い…たぶん。











 屋上についたヤマトは、目の前に揃った面々に教室に残った者達と同じように溜め息をついた。

「おまたせ〜♪」
「遅いわよ、太一!」
「ごめんごめん、それにしても、相変わらず場所取り上手いな〜」
「当然です。太一さんお手製弁当を、汚い場所でなんて食べれませんからね」

 にっこり迎えたメンバーに、太一は当然のように入って行く。
 ヤマトとしては、たまには二人っきりで食べたいと言いたい所だが、フォローを山としてもらっている身では、強いことは言えない。

「お兄ちゃん、浮かない顔だねv大体察しはつくけどさ♪」
「お姉ちゃんと将来を見据えたお付き合いを続けるなら、今から『小姑』の存在にも慣れておくことも試練の一つですよ、ヤマトさんv」

 相変わらずきっつい弟妹達に、幸せ気分を一気に吸い取られてしまったようなヤマト。

「そうそう簡単に幸せボケにはさせませんよ。ヤマトさんは気を抜くと、す〜ぐ墓穴を踏みまくりますから」
「今あるものに感謝するのは大切だけれど、それを当然と思ってもらっちゃ困るものねv頑張ってvヤマトv」

 囁かれたお目付け役のお言葉は、胸に染み入るお説教。
 言いたいことは多々あれど、言ってることは尤もなので、ありがたく拝聴しておくに限る…逆らったら最後、十年先までいびられそうだ。

「用意出来たぞ、皆♪」
「おお〜!」
「腕上げましたね、太一さん」
「美味しそう〜v」
「時間はかかったけどな?ヒカリ」
「ちょっと大変だったけどね」
「ご苦労様です」
「それじゃ、食べてくれ♪」

「いただきま〜す♪」

 全員の箸が一斉に元気良く動き出す。
 舌鼓を打ちながら、他愛無い話に花が咲く。
 そんなヤマトの目の前に、海苔のはちまきをつけたタコさんウィンナーが差し出される。

「はい、ヤマトvあ〜んv」

 周囲の気温が一気に下がる。
 殺気すら混ざりそうな視線の中、ヤマトは後に降りかかるだろう災厄より、目前の幸福を選んだ。

「美味いか?」
「もちろんだ!」
「良かったv」

 天上から照らす太陽に、少しの引けも取ら無い最上の笑顔。
 その中にさり気に『照れ』まで混じっている所が百点満点。
 だが、握り拳と共に幸せを噛み締めている彼をそうっとしていてくれるほど…世間様は優しくなかった。

「お姉ちゃん、そっちのきんぴらちゃんと味染みてた?」
「ああ、上手に出来てるよ。ほら」

 と、同じように食べさせる。

「こちらのおにぎりもいい塩加減ですよv」
「ああ、光子郎。お弁とついてるぞ?」

 と、手では無くそのままぱく。

「太一、こっちの出汁巻きサイコーよv」
「えvマジ?」
「ほら…ネ?」

 と、空の箸から直接ぱっくん。

「太一さん、僕この鳥肉の味付け大好きですv」
「そっか?じゃぁまた作ってくるなv」
「やったあ!」

 と、無邪気に喜んで見せる弟。

「………お前ら、わざとだろう…?」
「「え?何のこと?」」

 見事にハモった一同は、『悪巧みしてます』と書いてある笑顔をヤマトに向ける。
 そんな彼等に逆らえるはずも無く、即効で降りかかった災厄に、ヤマトはそっと悲しみをやり過ごすのだった…。

「なぁ、ヤマトはどれが一番美味しかった?」
「え?いや、まだ全部食べてないから…」
「そっか、気に入ったのあったら言ってくれよ?」

 にっこりと顔を覗き込んで来た太一の、言外に潜ませた『また作ってくる』の意味に、心が浮き立ち、顔が綻ぶのが止められ無い。
 こんな近くに、彼が待ち望んだ幸せが転がっていたりする。

 

 

 

 

 彼女がいて自分がいて、仲間達がいるから『現実(いま)』がある。

 いつだって『幸せ』と『悲しみ』は背中合わせで、だけど、ちょっとしたきっかけで輝くような幸せを手にすることも出来るのだ。
 その瞬間を捕らえるのは、本人の心がけ次第。

 それを逃がさないために…彼女と彼女等の戦いは、まだまだ続く。







 

おわり

 ……終わりました…。
 1111のキリ番、アキ様のリクエストでした…が。
 なげぇっ!なげぇよ、この話!
 キリリクってのは、もっと簡潔にまとめた話なんで
 ないかえ!?藤睦月っっ!!!
 …すみません…こんな話で…(泣)
 とりあえず、太一さん女の子ってことで、反応とか
 『女の子女の子』させてみました…。
 それもどーよ…(苦笑)