『キラ!何故お前がそんなものに乗っている!?』 『君等が僕の住んでたコロニーを木っ端微塵にしてくれたからだろうが!』 キラの機体にだけ通信を繋げたアスランと張り合うように、キラは全開通信ではっきりと言い切った。 突然その空域に響いた声に、ザフト・地球軍、両軍の動きが止まった。 「…何だ?」 「誰の声でしょう?」 「てか、どーいう意味だ?」 同じようにXシリーズに搭乗している少年達もいぶかしげに周囲を見回す。 すると、不自然に向かい合ったまま停止している自軍の赤い機体、そして敵軍に取り残して来てしまったトリコロールの機体に目が止まった。 そして、普段からは考えられないような、狼狽した同僚の声が聞こえた。 『…キ、キラ?』 『どうしてくれるわけ?父さんと母さんが汗水垂らして働いて!せっせと溜めた財産も夢のマイホームも!僕が一人っ子だから捨てられないって笑って、大事に取ってあった小さい頃からの服も、アルバムも、思い出も!何もかも宇宙の藻屑だよ!!あげく両親とは生き別れ、帰る家も無くし、偶然拾われた艦では友人達を人質に取られて戦えときたもんだ!それもこれも、全部君等が中立の僕等のコロニーに攻め入って来てくれちゃったおかげだよね!?違う!?』 怒り心頭…そんな雰囲気が通信機ごしにもびしばし伝わり、それを向けられたアスランだけで無く、地球軍、そして状況が把握しきれていないザフト軍までもがだらだらと冷や汗を流す。 『キ、キラ!少し落ち着いて話そう?な?』 『話し合いって言うのは、丸腰で言うもんだよね?アスラン。少なくともそんなごてごてと武器で固めたMSの中から申し込むことじゃない』 『そっ、それはっ…そうかもしれないが…っ』 『アスラン、戦争なんか始まらないって言ったよね?またすぐ会えるって言ったよね?なのに、そう言った君が戦禍を拡大させるだけの軍に入っているってどおいうこと!?僕を訪ねて来てくれたんじゃなくて、家ごと壊して家族と生き別れにしてくれるって何してくれるの!?三年ぶりの再会なのに、その手にナイフ持っているなんてふざけてるの!?アスランの嘘吐き!口だけ男!!ヘタレっ!!裏切り者ぉ〜っっ!!!』 『キ、キラぁ〜…』 ぐさぐさぐさあっ!…と、言葉の刃がクリーンヒットしたアスランは、がっくりと項垂れて肩を震わせている。 …もしかしたら、泣いているのかもしれない。 未だかつて、国防委員長の一人息子で、『氷の貴公子』との誉れも高かった彼に対し、これほどの暴言を吐いた者を見たことがあっただろうか…そして、それを無視するでも反撃するでも無く、甘んじて受け入れているかのような彼を、想像出来たことがあっただろうか…。 薄ら寒い空気が漂い誰もが口を閉ざす中、徐に通信機から、幽鬼の様な覇気の無い声が響いた。 『……母も、血のバレンタインで亡くした』 『え!?レノアおばさんが!?』 『そうだ。だから俺はザフトに志願した。…もう、誰も失くさないように。同胞達を守れるように』 痛いほどに真剣なアスランの言葉に、そしてその志願理由に、ザフト軍の者達はそっと納得する。 何でもそつなくこなしているように見えて、彼の姿勢はいつも、誰よりも誠実だった。 その理由がこれだったのだ…。 そして、地球軍の者達も複雑な想いを抱いていた。 地球軍に籍を持つ者にとってもあのユニウス・セブンへの核攻撃は衝撃的だった。 軍事施設すら無い、ただの農業コロニーへの攻撃…そしてその被害者の遺族が、軍に志願し目の前に立っている。 それを『運命』という言葉だけで片付けるには、あまりにも皮肉な巡り合わせだ…。 『だからキラ!俺はお前に地球軍などにいてほしくない!』 『違う!僕は地球軍なんかじゃないっ!あそこには、あの艦には友達が乗っているんだ!』 『だがお前はコーディネーターだ!こっちへ…ザフトに来い!キラ!!』 『何で僕が押し入り強盗団なんかに入らなきゃならないんだよ!!』 『…………お…?』 どうやら知り合いらしい彼等が、こんな戦場で互いが敵として再会を果たしてしまったらしいことを察していたザフト軍の面々は、聞こえて来た言葉を脳へと伝達するのに、コーディネーターらしからぬ時間を要してしまった。 『え…………と…………キラ…?』 戸惑い度120%といった感じを隠すことも出来ないアスランに対し、キラは毅然と言葉を返す。 『ねぇ、アスラン?君、レノアおばさんが亡くなって軍に志願したんだよね?』 『…そうだ』 『同胞の不遇を嘆き、同胞達を守るために』 『そうだ!』 『これ以上の犠牲は出さず、戦争を終わらせるために』 『その通りだ!キラっ!』 分かってくれたか!と喜色を滲ませたアスランを、次の言葉がばっさりと切りつけた。 『さて、じゃあ、中立国に住む『コーディネーター』は決して少なくないのはご存知の通り。それを知りつつ中立国に攻撃をしかけ、あまつさえ『親友』で『コーディネーター』の僕を家族から引き離して住む場所を奪った挙句、こんな兵器に乗せられて前線放り出させてしまった事実を踏まえて、さっきの台詞、もう一回言ってみようか?』 『『『『………………………』』』』 言えるもんなら言ってみろ…そんな空気を感じ取り、双方からイヤ〜な沈黙が返る中、ストライクから深〜い溜め息が吐き出された。 先ほどの台詞以上の、無言の責めが限り無く痛い。 そして、その戦場にあるまじき静寂を切り裂いたのも彼の機体に搭乗する少年だった。 『君は守るために軍に入ったと言う。けれど、そうして軍に入ってやったことで、一体何が守れたって言うの?お金?地位?名誉?』 『ち、違うっ!?そんな物のために軍に入ったんじゃない!オレはあくまで、同胞達を守るために…っ』 『君が大事だっていう同胞は、プラントに住む人達だけ?アスランは知っていたはずだよね?中立国にもコーディネーターが住んでいることを…中立国にしか住めないコーディネーターもいることを。君達第二世代の人達は何の疑問も覚えず、苦労もせずに、ぬくぬくとプラントで暮らせるからいいよ?でもね、僕みたいな第一世代は家族と離れないためにはナチュラルもコーディネーターも共に受け入れてくれる中立国に住むしかないんだ。そこにしか居場所が無いんだ!なのに…っ、それを知っていたはずの君がどうして…!?』 『………っ』 悲痛な声に、アスランも苦しげに俯く。 モニターに映るキラを真っ直ぐに見られるだけの、反論出来るだけの信念が今は無かった。 その姿を見て、キラも淡く笑んでそっと瞳を伏せる。 『…ごめん。アスランにはアスランの事情って言うのがあるのは僕にも分かってる。…アスランは国防委員長の息子だし、お父さんの七光りに目も眩みそうな立場もあるし、本人はただ視野が狭いだけなんだし、思い込みも激しいし、親の言うことに逆らえないヘタレだし、そんでもって親に言われるままに会ったことも無い女の子と婚約出来ちゃうような自分の意見をしっかり持ってない流されるままな人だってのは分かってるんだ。分かってるのに一方的に責めたりして…ごめん。だけど、これも分かって…僕は君のいる押し入り強盗団に入ることだけは出来ない!』 『……いや、キラちょっと…』 『ちょっと待てぇぇええぇぇ〜〜〜っっっ!!!』 声だけは沈痛さがひしひしと伝わってくるが、内容を吟味した途端何処から突っ込んでいいのかも分からないキラの発言に呆然と一瞬二の足を踏んだ隙に、横合いから烈火の如く怒りに燃えた声が轟いた。 『叫ばなくてもちゃんと聞こえてます。コーディネーターは普通より若干耳がいいんですから』 『そんなことはどうでもいい!貴様!ストライクのパイロット!』 『自分から名乗りもしない、初対面から高圧的な態度を取る人間に碌な人はいませんよね。そういう人は軍人とかになって、人殺しの技術の高さを鼻にかけて、人を殺した数と同意義である敵艦の撃破数を自慢にしてそうですごく嫌』 『〜〜〜〜〜っっ、イザーク・ジュールだ!貴様の前のデュエルのパイロットだ!』 『初めまして、キラ・ヤマトです。そのイザーク・ジュールさんが何の用ですか?』 『さっきの貴様の暴言のことだ!撤回しろ!!』 『あなたほど酷い物言いはしていないつもりですけれど、何のことでしょう?』 『〜っ!ザフトを『押し入り強盗団』と言い放っただろう!?』 『ああ…人様のコロニーに突然アポも無く押し入った上に、そこに住む民間人なんざ知ったこっちゃねぇとばかりに狼藉の限りを尽くし、目的の物だけ盗んでとんずらした挙句、証拠隠滅とばかりにコロニーごと破壊したヒトデナシ集団ですよね?それを『押し入り強盗団』と言わずして何と表現すればいいんでしょう?僕、間違ってますか?』 『〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっ』 心底不思議そうに言い募ったキラの言葉に、流石のイザークも黙り込む。 言葉に難はあるものの、イザークの勇気ある突っ込み(?)に心の中深く同意していたザフト軍達も、返って来た言葉に何だか居た堪れないような、胃が痛いような、頭痛が酷くなったような…。 『あ、あの…キラ・ヤマトさん?』 『あなたは?』 『あ、ブリッツのパイロットをしています、二コル・アマルフィと申します』 『初めまして、キラ・ヤマトです』 『ご丁寧にどうも。…あの、ちょっといいですか?キラさんのおっしゃっていることは最もですし、僕等が代金も払わずこの機体達を盗って来たのは事実です』 『あ、それはお気になさらず。あっちの地球軍の艦も、十中八九、モルゲンレーテに造るだけ造らせて支払いも済ませずかっぱらって来た窃盗犯ですから。軍という組織がどういう所なのか、本当によく分かりました』 さらっと言い切ったキラの言葉に、AA内の軍人達はぐさっっとえぐられた胸を数名が同時に抑えた。 『と、とにかくですね!そういった不法を侵したのは認めます!けれど、それを押してでも僕等にはやらなきゃならないことがあるんです!』 『民間コロニーの爆破ですか?』 『それは地球軍がやったことです!』 『今あなた方が攻め込んで落としたコロニーは民間コロニーでは無いと?』 『そ、それは…っ』 『死者の数に差こそあれ、ユニウスセブンを攻撃した地球軍と、ヘリオポリスを落としたザフトと、何処が違うって言うんです?やっていることは同じじゃないですか』 『それは…っ、けれど、それはっ、地球軍があんな所で兵器を造ったりするから…っ』 『そうやって全てを地球軍のせいにしてしまうんですね。やってることは同じなのに。目的のためには多少の犠牲など仕方が無いと?自分だって命を落とすかもしれないのに?』 『僕は!僕は、軍に志願した時からそれは、覚悟の上です…!』 『へぇ〜…ご両親は反対されませんでした?自分の息子が人殺しになることを』 『そ、そういう言い方は止めて下さいっ!それにもちろん、反対はされました。けれど父は、評議会委員である父は、軍の必要性もその重要性もよく理解しているから…っ、だから…っ!』 『…それでも、君に何かあれば、お嘆きになるだろうね…』 『それは…』 『ねぇ…不公平だと思わない?』 『………は?』 出港前、目を潤ませて自分を見送った母、決然としながらも何処か不安を押し殺したかのように自分を見つめていた父…そんな両親を小さくは無い胸の痛みと共に思い出していたニコルの耳に届いたそれは、何故か憮然とした響きを持っていた。 『お父さん、評議会委員なんでしょ?自分は自分の戦場で、君には本当の戦場で、互いに力を尽くして頑張ろう…みたいなこと言わなかった?』 『…え?』 言葉は違うが、似たようなことを言われたような記憶がある。 その時は『本当の戦場で』では無く、『お前の戦場で』だった気がするが…。 『君が汗だくになって、両手を真っ赤な血に染めて、それでも懸命に命のやり取りをしている間、お父さんは空調の整ったコロニーの豪華な部屋の一室で、良い服を着て、良い物を食べて、髪も綺麗に整えて、座り心地の良い椅子と無駄に豪奢な机の上で『お父さんの戦い』とやらをしてるんだろうねぇ、きっと』 『……………』 『そうしてそれは、君が正に命を落とすその瞬間にだって変わらないはずだ。そして、君の命を踏み台にしてする『お父さんの戦い』は決して戦争を終わらせるためのものじゃない。いかにして地球軍に勝つかだ。きっとお父さんはプラントの英雄になるね…『プラントの未来のために息子をも名誉ある犠牲とした悲劇の父親』として』 『……………』 『お父さんは君の死を嘆くだろう。苦しみ、涙するだろう。けれど、その映像はプラント内に配信されて、多くの同情を買うだろうね。君の死は『尊い犠牲』の一言で片付けられるというのに。肉片すらも残さず宇宙の塵となったというのに』 それは決定なのですか?…と、ちょっと思った者もいたが、それを口に出せる勇者はいなかった。 『そうして君が死んだ後でも『お父さんの戦い』は続く。空調の整ったコロニーの豪華な部屋の一室で、良い服を着て、良い物を食べて、髪も綺麗に整えて、座り心地の良い椅子と無駄に豪奢な机の上で。そしてお父さんの地位と名誉と財産は約束されました。めでたしめでたし』 『…………………………………あの、隊長』 『なっ、なんだね?』 長い長い沈黙の後、憑き物が落ちたような声でニコルは母艦に通信を入れた。 『突然すみませんが、僕ちょっとプラントに帰ります』 『『『『……は?』』』』 『ですから、ちょっと休暇を下さい。何だか僕、父さんと話し合う必要性が感じられて…』 『て、ちょっと!待て待て待て〜っ!ニコル!!何あいつの口車に乗らされてんだよ!』 『でもディアッカ!本当に僕、話し合う必要性が…っ』 『だあら!それが口車に乗らされてるっつーんだよ!よく考えろ!』 『考えてますよ!何不自由無く大切に育てられて来た僕が、不味い飯・狭い部屋・不気味な上司という最悪三拍子に耐えながら命がけで戦ってるっていうのに、父さんは空調の利いた広い部屋で、良い服着て良い物食べて、温かくて柔らかな布団で眠ってるかもしれないなんて、こんな不条理なことありますか!?いえ、ダメです!あっていいはずがないっ!!』 『お、落ち着けニコル!と、とりあえず、ブリッツのパワーじゃプラントまで飛んでけねぇから!な!?』 『理不尽です!!』 『お前もなっ!』 納得せざるを得ないディアッカの説得に憤ったニコル、それにちょっとキレかけたディアッカの返した言葉は…どこぞのカラフルな球体の言葉のようだったことを、本人は知らない。 そして、さりげなく大変失礼なことを部下に言われた『不気味な上司』の存在は、これでもかと言うほど綺麗にスルーされた。 『漫才はそれ位でいいですか?』 『まっ…!?』 『とりあえず、納得したならこの場は退いてくれませんか?じゃないと、後悔することになると思うし』 『『『『は…?』』』』 キラの溜め息交じりの意味深な言葉に双方疑問が浮かび上がるが、それを問い質す前に一人の女性が気前良くぶち切れた。 『キラ・ヤマトっっ!!!貴様先ほどから何をやっている!?さっさと敵を倒さんかっっ!!!』 その、ある意味自殺行為に近い発言に、妙な空気の漂っていた戦場に一瞬にして緊張が走る。 が、それを鼻先であしらい、便宜上の母艦に指名された少年が心底呆れた様に振り向く。 『五月蝿いですよ、おばさん。何で、どうして、どういった理由と根拠で、僕があんたの命令を聞いてあげなきゃならないんです?』 『なっ!?貴様そのために出撃したのだろう!?』 『ホンット物覚えの悪い生き物ですね、軍人は。僕は中立の民間人だと言ったでしょう?その僕のどこに『敵』がいるって言うんです?』 『貴様っ!裏切ったのか!?』 『人聞きの悪い…一体いつ、僕とあんた達との間に、裏切る裏切らないなんて言える信頼関係が築かれてたって言うんです。勝手な思い込みで人を『裏切り者』扱いしないで下さい。『裏切り者』って言うのは、戦争なんか起こらないって言ったくせに、ちゃっかり戦争拡大の軍に入って戦禍を広げてる、そこの赤い機体に乗ってる人のことを言うんですよ』 『キ、キラ……』 モニター内の映像だけで無く、MSを犯人を指名する時の探偵宜しくびしぃっ!とイージス向けて指差させた。 その言い様に、彼の機体のパイロットは『違う、違うんだ…』と繰り返すが、今は誰にも聞いてもらえない。 が、その様子と会話に、ザフト軍の者達は、キラが地球軍では無いというのは本当らしいと結論付けれた。 そして、そんな彼等の前で、キラは重々しく宣言する。 『この際だからはっきり言いますが、AAの地球軍の皆さん…あんた達がやったことは犯罪なんです』 『『『『……………は?………………』』』』 何?何なんですか?突然??そんな思いの宿った疑問符が発せられる。 『治外法権、超法規的を座右の銘にしているよーな軍人さん達にはぴんとこないのかもしれませんが、これまでの行為は、オーブでは決して許されることじゃないんです』 『何を…』 『あんた達がやったことをオーブの法に当て嵌めれば、不法入国・不法占拠、まずこの時点では国外退去で済みましたが、武器製造の時点で『15年以上30年以下の懲役・または1000万以下の罰金』、更に未成年者の拉致・監禁・脅迫で『終身刑』が適応されます。で、また未成年者への戦闘行為を強要したことによっと『死刑』も可です。この場合、絞首刑か電気椅子かは自分で選べます。しかし、未成年者を人質にとった未成年者への殺人強要…もう庇いようがありません。オーブ・オノゴロ島中央ふれあい広場にて公開処刑になります。ちなみに執行方法は『ギロチン』ですから』 『『『『………………………………』』』』 『ここ十数年、ギロチンでの公開処刑になった人はいません。何でも、ギロチンで斬られた首がコロっと転がるそうなんですが、首受け皿が無くて、その転がった距離と名前が石碑に刻まれるそうです。よかったですね、歴史に名前を残せますよv『犯罪者録』にですけど』 『〜〜〜〜キラ・ヤマトぉ〜っ!貴様我々を馬鹿にしているのかっっ!?』 『もちろん、心の底から力の限り馬鹿にしてますよ!あれほど『僕等は民間人なんだから解放して下さい』とお願いし続けたにも関わらず、我道を行き続けて罪を重ねたのはあんた達です。この愚かな行為を馬鹿にしなくて、他の何を馬鹿にしろって言うんです。まさか、他国で犯した罪が自分が軍人だというだけで超法規的に何をしても許される…なんて、思ってたわけじゃないですよね?同盟国でも藩属国でも統治国ですら無いのに』 『んなっっっ……!?』 『はいは〜い♪とりあえずその辺でvキラご苦労様〜v』 『あ、ミリィ!作業終わった?』 『ええvキラが戦場の全ての意識を自分に向けてくれたおかげで恙無く終えられたわvv』 あまりの寒さに凍え死にそうだった空域に、やけに明るく、軽い女の子の声が響いた。 戦場でのありとあらゆる状況を想定し、様々な訓練を繰り返して来た軍人達が、どのような状況とも違う現在について行けず、戦場らしからぬ雰囲気に頭の先からすっぽりと飲まれている。 故に、彼等はそれに気づくのに、致命的に遅れた。 『キラ、連絡もとれたぞ♪直こっちに到着するってさ』 『は〜やれやれ間に合った!これでペナルティーを免れるぞ!』 『だね。皆もご苦労様v』 謎な会話が繰り広げられ、その内容については両軍に理解出来る者が一人もいなかったが、不穏な空気だけはひしひしと伝わっていた。 何か…自分達の想像を遙かに凌駕するように、認め難い何かが起こっていると…。 『貴様等!無駄口を叩くな!妙な行動をとったら許さんと言ったはずだろう!?』 『やだ怖〜い。顔がまるで般若の様v同じ女の、ううん、同じ人間の顔だなんて思えな〜い』 『なっ…!?』 『ミリィ…黙っててやれよ。十回ばかり曲がりくねってお肌の曲がり角の迷宮に入り込んだよーなおばさんが軍なんて組織に入ってるんだ。人間とは思えない形相をしていたって仕方ないと思うぜ?』 『そうそう。それにプライドだけは無駄に高そうな、いかにも『代々無差別殺人』、失礼、『代々軍人の家系』って感じなのに、同年代の女の人が自分よりも官位が高いもんだからヒステリー起こしてるんだよ』 『見るからにそんな感じだよな〜。初対面から高圧的な態度だったし。他の人間が自分の命令を聞いて当然だって思い込んでるみたいだし…さっきキラが話してた押し入り強盗団の方にも態度でかい人いたけど…やっぱ軍人って皆ああなのかな…』 ふぅ〜やだやだとジェスチャー付きで溜め息をつく学生達に、同じブリッジにいた某少尉は血管がぶち切れる寸前で、その様に腰が引けながらも、逃げ出したい衝動を必死に抑えて艦長が口を挟んだ。 『と、とにかく!誰か状況を説明してちょうだい!』 『ああ、はい。つまりですね、今現在この宙域にある全ての機体は、僕等が掌握しました。…ということです』 『『『『『………はい???』』』』』 |
つづく |
長くなったので一旦切ります(苦笑)