あなたがくれた、言葉全てが僕の宝物。

 

 

 自分は間違っても『人好きされるタイプ』では無い。

 人付き合いも苦手だし、体を使う遊びもあまり好きじゃ無い。
 何よりこの言葉使いが、無意識に他人を遠ざける壁のようなものを創り上げていた。

 先生や上級生はもちろん、同級生や家族にすら変わらない、『敬語』。

 自分の出生を偶然聞いてしまったあの日から、少しずつ積もっていた僕の中の心の『しこり』。
 それが形として現れてしまったのが、あの『言葉使い』。

 影で皆がどう言っていたのかは知っている。

 つき合いづらい。
 何を考えているのか分からない。

 こそこそと交わされる会話が耳に入らなかった訳ではない。
 ただ、それでも成績だけは良かったので、買わなくていい反感まで買ってしまったことも事実。
 だけど、自分自身どうしていいか分からずに、そんな時の対処法なんて、どこにも載っていなかったから、ただ放っておくしかなかっただけ。

 そうしている内に自分から一線をおくようになり、『自分が関わりたくないんだ』と思い込むようになった。

 

 そんな中、まるで奇跡のように現れたあなた。

 

 初めは訳が分からず、迷惑そうなふりをしていれば、いつか離れていくだろうと信じて疑わなかった傲慢な自分。

 向けられる笑顔を見なかったふりをして。
 かけられる言葉を聞こえなかったふりをして。
 重ねられた手のぬくもりを…感じなかったふりをして。

 全てが無駄だったのに。

 あなたは知っていた。
 きっと初めから分かっていた。

 僕がどんなに乾いていたかを…僕がどんなに、暖かさに飢えていたかを…。

『光子郎…か。綺麗な名前だな』

『まるで空気に溶けてくみたいだ』

 言われた時は面食らった。 
 だけど後で、それでもいいかと思った。

 太陽が降り注ぐ空気になら、溶け込んでもいいかもしれない…そんな風に思った自分に少し笑えた。

『頭いいな〜。オレの宿題代わりにやらない?』

 やることが無いから、一日中パソコンの前に座って知識だけを詰め込んでいた自分。

 生意気だと言われたことは多かったけれど、褒めてくれたのは、両親と先生以外では…初めてだった。

『光子郎』

『光子郎』

『光子郎』

 あなたが読んでくれる僕の名前が、僕の心に光を与えてくれる。
 空気に溶け込んだ僕の名前が、あなたの光を分けてくれた。

『光子郎!お前のおかげで、オレとっさの時でも『敬語』に困らねーや!光子郎のマネすりゃいーんだもん!』

 微笑んだあなたに、涙が出そうになったことをあなたは知らない。

 敬遠されるだけ、疎ましがられるだけのこの言葉使いすら、あなたにとっては障害にはならない。
 僕が僕であることを、どんな風に話しても、何をしていても、僕でしかないことを認めてくれた初めての人。

 あなたがくれた真実と、同じ優しさを両親がくれました。

 あなたが初めに気づかせてくれたから、間違えずに両親の言葉を信じることが出来ました。

 いつかちゃんと、あなたに伝えることが出来るだろうか。
 ありったけの感謝と、それ以上の想いを込めて…。

 

 太一さん、あなたのことが大好きです。




 

おわり


  光子郎×太一の話を考えていたら突然光子郎さんが
  頭の中で語り出したので、急いでトレースしました(笑)
  う〜ん、純愛v(笑)