中学の卒業式の翌日、同時に義務教育を終えた仲間三人を祝うため、選ばれし子供達は久しぶりに顔を合わせることになった。
 何処へ行くということも決めないまま、集合場所も『いつもの場所で』…大きく変わろうとする何かから、皆目を背けたかったのかもしれない…。











 一番初めに到着したのはヤマトとタケルの二人だった。

「ちょっと早く来すぎちゃったかな」
「…その内皆集まるさ」
「そうだね」

 まだ誰の姿も見えないことを確認し、タケルが海沿いの鉄柵に寄りかかる。
 ヤマトも同じようにもたれながら、海から吹く風に目を細めた。

「…まだ少し寒いな。タケル大丈夫か?」
「大丈夫だよ。兄さん、僕も今度中学に上がるんだよ?」
「ああ、そうだな。…悪い」

 タケルが相変わらずな兄をくすりと笑えば、ヤマトもバツが悪そうに苦笑を浮かべた。

 ヤマトがこの春高校に進学するように、タケルも中学に入学する。
 入学祝に父親が制服をプレゼントするという話になっていたが、タケルがいきなりヤマトの制服が欲しいと言い出し両親を驚かせたのはつい最近の話だ。
 結局、どうせ大きくなったら買い換えることになるのだし、何枚あっても困らないからという太一やヤマトの経験談から、ヤマトはまだ着れそうな制服を一抱えタケルに贈った。
 鞄だけはボロボロだったので買うことになったが、長年の夢だった『兄のお下がり』を手に入れたタケルは嬉しそうだった。

 それを聞いたヒカリが、その足で空の自宅に赴き、ダンボール二箱分もある『お下がり』を手に入れ、ほくほく顔で帰って来たことは選ばれし子供達全員の笑い種になっている。
 まあその後、二番煎じならぬ三番煎じの大輔が太一に泣きついて来たのはお約束だろう。

 思い出も思い入れも十二分にある制服だが、彼等なら大事にしてくれる…その疑うまでも無い事実に、先輩諸兄は快く譲ってあげたのだった。
 そして、譲り受けた品を三人揃って八神家で試着披露した日、新品に袖を通すよりも嬉しそうなのが印象的だったと、見学に集まった者達から後々までに語られることになる。

 また、伊織がこっそり光子郎と何かを約束していたのは、もう少し未来になってから明かされる別の話。

「…ねえ、兄さん?」
「んー?」

 聞きたくて、ずっと聞けなくて…とうとう今日まで来てしまったたくさんの事。
 ずっと同じでいたかった。
 だけど、心も体もどんどん変わっていってしまうから…未来からは逃げられない。

「…言わなくて、いいの?」
「…何をだ?」
「…太一さんのこと」
「………」

 兄の機嫌が目に見えて下降していくのが分かる。

「…太一さん、行っちゃうよ…?」
「…………」

 心配気に見つめた兄は、押し黙ったまま何も言わない。

 太一はこの春からお台場を出て行く。
 有名なサッカーの強豪校からのたってのスカウトで、寮に入ることになったのだ。

「…好きなんでしょ?」

 小さく、伺うような声で兄を見上げる。

 誰を…とは言わない。
 言わなくても分かる。
 もうずっと前から、この心にあるのはただ一人だけ。

「…兄さん…」
「…言わない」
「兄さんっ」

 表情を隠すように俯き、抑揚無く呟いたヤマトに、タケルは焦れて声を荒げるが、彼は海面を見つめたまま言葉を続けてしまった。

「別に、好きなんかじゃ…ない」
「………兄さん…」

 意地っ張りと言うか、意固地と言うか…兄のこういう困った性格は重々承知していたつもりだったが、そんな彼の決意を翻す術は知らなかった。
 こういう時の彼を動かせるのも、たった一人だけだったから…。

 タケルは仕方が無いと溜め息を一つついて諦めた。

 きっとなるようにしかならないし、自分がこれ以上言っても事態は悪化するばかりのような気がしたから。

「…そーいえば、皆まだかなぁ…」
「もう来てるぞ♪」
「「えっ!?」」

 話を変えようとタケルが呟いた言葉に沿うように、予想していなかった返事と衝撃が襲った。

「よっ♪早いな二人とも」
「た…太一さん!?」

 両腕で二人の肩を抱くように飛び込んで来た太一に、タケルは驚き兄の様子をさっと伺う。
 しかし、ヤマトは声も出ないように固まってしまっていた。

「えっと、太一さん?いつ来たんですか?」
「ん?たった今だけど?」
「あ、じゃあ…話は…」
「話?」

 きょとんと首を傾げる太一に、タケルはほっと胸を撫で下ろす。
 最悪の事態は免れたらしい…。

「いえ、何でも無いんです。あっと、そういえば太一さん…ヒカリちゃんは?」
「あいつはまた空ん家行ってる。昔の服がまた色々出て来たからって連絡あってさ、嬉々として出てったよ。その内走って来るだろ?」
「そうなんですか」

 話している間にも次々と仲間達が集まりだし、太一は手を振って応えていた。
 大輔などは通りの向こうから走って来たかと思うと、そのまま勢いに乗せて太一にタックルをかまし、強かにこずかれている。
 それでもまるで吸盤でも生えているかの様にくっつき、賢や京を筆頭に笑われていた。

 しかし、皆楽しそうに笑い、楽しそうに話してはいるが、どこか寂し気で、太一の予言通り集合時間ギリギリに走ってやって来たヒカリと空の瞳が、少し赤くなっていたように見えたのも、きっと気のせいでは無い。

 春は出会いと別れの季節。

 大きく変わっていく自分達。
 このままではいられない…いつまでも子供のままでは、いることは出来ない。
 心も体も…。

 言わなくても、いいの…?

 返事は無い。
 それでも、ただ一人を見つめる兄の背中に、声には出さずに語りかけていた。











 何となく手持ち無沙汰でつけたTVから発せられた歓声に、ヤマトは身じろぎ一つも出来ず、画面を食い入るように見つめることになった。

 映っているのは『全国サッカー選手権』の決勝戦の様子。
 国立競技場に集まったたくさんの応援団と観客達の声援に応えるように、選手達が一つのボールをめぐる駆け引きを繰り広げている。

 だがうるさい位の歓声も、アナウンサーや解説の声も耳には入らない。
 惹きつけられたのは、見慣れぬユニフォームを身に纏い、エースナンバーを背負いキャプテン章をつけている…見違えるはずの無い彼。

「……太一…」

 真剣な表情で指示を出しているのだろう彼と、その指示が的確に機能しているのだろうチームメイト達。
 素人目に見ても分かる、完成度の高いプレー…。
 そして、その中心にいる、彼。

 もう随分と会っていない。
 声すらも、最後に聞いたのがいつだったか思い出せない。
 それでも目を閉じればはっきりと浮かぶ、彼の笑顔と自分を呼ぶ声。
 あんなに近くにいた自分。

 それなのに…TVに映る彼の姿は、自分が知る頃よりも成長し大人びていて、とても遠くに感じられた。

 自室のベッドの上に横になり、何をするでも無く虚ろな思考に耽っていたが、大気の寒さに我に返った。

「…そーいや今、正月だっけ…」

 大掃除も正月の支度も自分のこの手でしたというのに、今すっかり忘れていた自分に唖然とする。
 外では雪でも降りそうな冷え込みだというのに、ヒーターもつけずに部屋着のままぼうっとしていれば寒さも感じるというもの。
 いつの間にか窓の外は夕闇が迫り、冷え込みも一層厳しくなる時間帯。
 風邪を引いていないだけでもありがたい…。

 去年の正月は、今年と似たようなものだった。
 父親は相変わらず仕事人間で、母親も忙しく、年始の挨拶も型通りに済ませるだけだった。

 一昨年は…あいつがいた。
 中学最後の正月は、受験前だと言うのに自分は推薦が決まっているからと、自分と空も『息抜きだ〜っ!』と勝手に巻き込んで、仲間達と大騒ぎになった。
 場所は騒ぎやすいと自分の家になり、あまりにハメを外し過ぎて、着替えを取りに一時帰宅した父親を驚かせたのを覚えている。
 流石に普段が普段の生活なので怒られることはなかったが、彼がその惨状に呆れていたのは確かだろう。

 あれから二年。
 たったのと言うべきか、やっとと言うべきか…離れれば変わる、もしくは忘れられるのではと思っていた。
 だが反対に、決して変わることの無いだろうことも、頭のどこかで分かっていた。

 そう…忘れられるはずが無い。
 そんな風に簡単に消せる想いなら、始めから抱えたりなんかしない。

「………太一…っ!」

 吐き出せるものなら想いごと吐き出してしまいたいとその名を呼ぶが、呼ぶごとに想いが募っていくのがはっきり分かる。
 だからずっと呼ばなかった。
 会いもしなかった。
 春や夏の大きな休みには、ほんの少しとはいえ帰って来ているのも知っていた。
 だが会う努力は一切しなかった。
 一度会ってしまったら…もう押さえつけている気持ちを、止められないと知っていたから。

 それなのに、彼は事あるごとに姿を見せる。
 試合の中継や、インターハイの時期のニュース、そしてお節介な友人が見せるサッカー雑誌…。

 もう、限界かもしれなかった…。
 会いたくて、心が壊れそうだった…。

――――ルルルルル♪

 リビングから聞こえた電話の音に、心の泥沼からふっと現実に引き戻された。
 そして苦笑する。

 どんなに会いたくても会えはしない…この二年間、そうする努力を一切放棄して来たのだから…。

 ヤマトは起き上がると、しつこく鳴り響く電話に出るためにリビングに向かった。
 これだけ鳴っていても切らないのは、大方父親が着替えを取りに行くからその準備をしろとでも言う要請だろう。
 無視してもいいが、そうなるといつまででも鳴っているから仕方が無い。
 留守電にしておかなかった自分の不明を呪いつつ、ヤマトは不機嫌な声で受話器を取った。

「…はい、石田です」
『何だ?やけに不機嫌な声してんな?』

 聞こえた声に、ヤマトは受話器を落としそうなほど驚いた。

「っ!?…た、太一!?」
『よぉ、久しぶり〜♪元気そうだな、薄情者』
「は、薄情者って…」
『あれ?知らねぇ?今日国立で決勝戦だったんだぜ?応援に来て来んなかったのお前だけよ?』
「えっ、あ……」

 言われてハタと気づく。
 あんな大切な試合を、仲間達が家で観戦なんかするはずが無いのだ。
 自分は誘われたのかどうか、それすらも記憶に無い。

「…悪い。でもTVで観てたぞ?」
『ふ〜ん?じゃ、どっちが勝ったか言ってみな?』
「……悪い。覚えて無い…」
『ったく!見え透いたウソつくなよな〜』
「いや、観てたのはホントなんだ!ただ、結果まではって言うか…」
『分かったよ。観てたことにしてやる!結果は一対〇でうちが勝ったの!すっげー接戦で白熱した好試合だったんだぜ?』
「…すごかったんだな」

 嬉しそうな太一の声に、ヤマトも先ほどまであった緊張が嘘のように解かされ、興奮したように話す彼の話に楽し気に相槌をうつことが出来た。

 もしかしたら、もっと劇的な何かがあると思っていたのかもしれない。
 その正体も分からない『何か』を、自分は恐れていたのかもしれない…。

 だが、久しぶりに聞いた太一の声は昔と変わらず、自分の心は拍子抜けするほど穏やかで、まるで時間が戻ったかのように『あの頃のまま』だった。
 彼を想う心すら…。

『まぁ、いいや。なぁヤマト、これから会わないか?』
「え!?」

 突然鼓動が跳ね上がった。

『今日勝って、一応オレ等日本一になったからさ、監督から恩赦が出たんだよ。んで今実家帰ってんの♪家にいんならヒマだろ?』
「えっ、いや、だけど…」
『何だよ、用事でもあんのか?』
「いや、そうじゃないけど…お前疲れてるんじゃないのか?」
『平気平気♪んなやわな鍛え方してねーって♪』
「わ、分かった。どこで会う?」
『オレがヤマトん家行くよ。おじさんはまた仕事か?』
「ああ。…じゃあ、気をつけて来いよ?」
『ん。もう着いた』
「え…」

 聞き返そうとした時、インターフォンが鳴った。

『たった今。開けてくれ』
「………」

 半信半疑で受話器もそのままに、ゆっくりと玄関に行って鍵を開ける。
 扉を開ける自分の動作が、まるでスローモーションのように感じられた。
 そしてその向こうにいたのは、たった今まで話していた携帯電話の通話ボタンを押す、懐かしい彼の姿。

「…ひさしぶり」
「………太一」

 太一はにっと笑うと、勝手知ったる他人の家とさっさと上がりこんでしまった。

「結構綺麗にしてんのな?あ、正月だからか?」
「…ああ」

 太一がよく来ていた頃とあまり代わり映えのしない室内。
 ほとんどがあの頃のまま…そしてそこに、あの頃より少しだけ成長した彼がいる。

「…身長は、あんまり変わらないか?」
「ちゃんと伸びたよっ!ヤマトが無駄に伸びすぎてんだよ!」
「髪は相変わらずぼさぼさだし…」
「ヤマトは変わったよな。長いのは変わんないけど…色少し抜いたか?」
「地毛だぜ?でもそうだな…色は少し薄くなったかも…」
「金髪はハゲやすいんだぜ?このまま色がどんどん薄くなったら、色だけじゃなくて髪自体が抜けたりしてな♪」
「怖いことゆーなよ…」

 楽し気に笑い、ヤマトの部屋に行こうと後ろを向いた太一に、体が勝手に動いていた。

「…ヤマト?」

 後ろから突然抱きしめられ、太一が驚いたようにヤマトの顔を見ようとする。
 だが、ヤマトは太一の首筋に顔を埋めたまま微動だにせず、しっかりと太一を抱いていた。

「……ヤマト?何…」
「……好きだ」
「えっ…」

 太一が動かないヤマトを促そうと声をかけると、ぼそりと彼が呟いた。

「……太一が、好きだ…!」

 今度ははっきりと…。
 太一は目を大きく見開きしばし呆然としていたが、告白したまま動かないヤマトにはっとして勢いよくひっぺ返し、そのまま胸倉を掴み上げた。
 驚いたヤマトには構わず、やや下から鋭い目線で睨み上げる。

「…今、何つった?」
「は?」
「いいから言えっ!今何て言ったんだ!?」
「…た、太一が、好きだ…と…」

 少々混乱気味に繰り返せば、太一はふっと笑い、次いで高らかに宣言した。

「おっしゃ、言わせたぜ!オレは勝った!!」
「………は?」
「とうとう言わせたぜ!ふははははははっ!」
「……………」

 あまりと言えばあまりな太一の態度に、唖然としていたヤマトの中でふつふつとこみ上げて来る物があった。
 怒りだ。

「…おい。人が一世一代の決心をして告白したってのに、その態度は無いんじゃないか?」
「ふんっ!お前の決心なんぞ知ったことかよ!自業自得じゃ、ボケぇ!」
「ボ…って、大体何なんだよ!?勝ったとか言わせたとか!?」
「オレの意地だっ!お前に『好きだ』って言わせるってなぁっ!」
「はあっ!?」

 訳の分からないヤマトと、勝ち誇る太一…双方肩で息をしながら睨み合う。

「…分かるように話せ」
「おうよ。…二年前、中学の卒業式終わった次の日に皆で集まって出かけたの、覚えてるか?」
「ああ、覚えてる」
「あの時お前、オレのことなんか好きじゃねぇってタケルに言ったよな?」
「…………」
「言ったよな!?」
「…聞いてたのか?」
「あのタイミングで来て、聞こえてねぇと思う方がどーかしとるわいっ!」
「………」

 言われてみれば、その通りのような気がしなくもない…。

「実はあの日、オレからお前に告ろーと思ってたんだ」
「は!?」
「オレはお台場出ちまうし、ヤマトの高校は共学だし、まかり間違ってどこぞの女に油揚げ攫われるなんて冗談じゃねぇからな。お前からじゃいつまでたっても言ってくれそーにねぇしで、オレから言おうと思ってた」
「ちょっと待て。何だその自信は…」
「バカヤロー!お前がオレのこと好きなんざ、六年前から知ってるわっ!!仲間内でだって知らねぇ奴がいねぇのに、オレが気づかないわけがねぇだろーがっ!」
「…………いや、でも、えーと…」

 力説する太一の科白に、色々引っかかる所はあるが納得出来てしまいそうな、腑に落ちないような…ヤマトの胸中はとても複雑だった。

「で、お前のあの言葉だ。オレは誓ったね…絶対お前の口から『好きだ』と言わせてみせるってなぁ!」
「や、だから、何でそんな結論になるんだ!?」
「笑いたきゃ笑え!だけどこれだけは譲れねぇ…オレの意地だった。…でも、まさか今日言われるとは、思ってなかったけどなぁ…」

 ふんぞり返りそうな勢いだった太一のトーンが急にクールダウンし、そのままへたりと座りこんでしまう。

「た…太一??」

 焦って腰を下ろし、どうしたのかと覗き込んだヤマトの袖を、太一はぎゅっと握り締めた。

「…遅ぇよ、ヤマト…二年だぞ?二年も待たせやがって…」

 掴んだ手は微かに震え、目には薄っすら涙が浮かんでいた。
 驚くヤマトの首にそっと腕を回し、太一は縋るように抱きついた。

「…お前オレに会おうとしねぇし、会えねぇし…オレが少しも不安じゃなかったとか思うなよ!?そんで散々待たせた挙句…いきなりだし…!」
「…すまん、太一…」

 腕の中にある確かな温もりに、全てのしこりが解けていくのが分かる。
 想い悩んでいたのは自分だけでは無い。
 想いは決して、一方通行では無かったのだ。

「…すまない、太一」
「…そんな言葉じゃ許さねぇ…もっと違う言葉で謝りやがれっ」
「…太一…」

 きっと向けられた瞳は、『友人』だった頃とは微妙に違う色を宿している。
 ヤマトは微笑み、腕の中で自分の言葉を待つ彼に、望み通りの言葉を贈った。
 彼が待って、待ち続けた言葉は一つだけだから…。

「ずっと太一が好きだった」
「…もっとだ」
「太一だけが好きだ」

 はっきりと言い切ったヤマトに、太一はやっと…困ったような泣きそうな、それでいて嬉しそうな笑顔で飛びつくように抱きついた。

「オレだってヤマトが大好きだ!」
「っ!」

 それは、太一から言われた初めての言葉。
 太一がずっと待っていたのも何となく分かる。

 きっと世界中に溢れている、何の変哲も無い何処にでもある言葉。
 だけど、たった一人の好きな人が言うだけで、どんなものよりも大切なものになり、その人からで無ければ何の意味も無くなってしまう。

 聞きたくて、言いたくて…言うか、言わせるか…これもきっと、究極の選択。
 待つのは辛い。
 楽になる方法を知っていて、それでも彼は『待つ』ことを選んだ。
 妥協しない性格は困ったものでもあるけれど…。

 今回の試練は太一の一人勝ち。
 彼の意表をついた点のみ合わせても、9:1で太一に軍配。

 勝ったようで負けた。
 負けたようで勝った。
 そんな関係でいるために、負けっぱなしではいられない。




 これからやっと…二人で歩いてゆけるのだから…。






 

おわり

      1700HITの咲良様のリクエストでした。
      めちゃくちゃ時間かかってすみません(汗)
      原因は、ヤマトです(笑)
      前半部分までは随分前に書いていたのですが、後半…。
      貴様こんだけ太一さんを苦しめておいて、ぐだぐだ悩んで
      んじゃねぇっ!と止まってしまってました(爆)
      こんな話ですが、気に入って頂ければ嬉しいです(汗)
      ありがとうございました。