自分勝手で思い込み激しい陶酔男と、結局母親であるより女を選んだらしい女が心中紛いに倒壊するビルと運命を共にした。

 残されたのは…運命と人生を弄ばれた、子供達だけだった…。








 虚ろな瞳に、あまり生気を感じさせない姿が少し辛い。

 けれど、生き残った者は…生きている者はこれからも生きなければならない。
 キラは、そっと保護者を失ったばかりの少年に近づき、その瞳を覗きこんで微笑んだ。

「…僕と、一緒に行こう?」

 捨てられた子犬のようだった少年の瞳に生気が戻る。
 柔らかな金髪を子供のように優しく撫でられ、彼の顔がくしゃりと歪んだ。

「……頑張ったね…」

 小さく震える体を抱きしめる。
 きゅっと服の端を握ってくる仕草は、ほとんど子供のそれだった…だから…。

「…それから、辛かったね…」

 親を亡くしたばかりの可哀相な子供を、精一杯の優しさで包み込んだ…。









「キラくん!」

 レイを連れてアークエンジェルに帰艦し、とりあえず休憩室で体を休めていた彼等の所に、連絡を受けたマリューが駆けつけた。
 レイが、彼女の大切な人に連なる者のクローンであることは分かっていた。
 それ故に、何かとその存在を気にかけ、キラが連れて帰って来たと聞いて、作業が一段落した段階でやって来たのだ。

「…マリューさん…いいんですか?」
「ええ。私も彼と話たかったの」

 マリューはこちらに視線も向けずに座っている少年を見やる。
 まるで、途方に暮れた子供のような風情に胸が痛い。
 彼も、大人のエゴから生み出された被害者だと思うから…。

 そっと彼等の前に膝を着き、下から覗き込むように優しい眼差しを送った。

「…今は、色々と途惑うことも多いと思うわ。けれど、これからは、誰かの命令でも人形でも無く、あなたの意志で生きて行くの。辛いことも苦しいこともあると思うわ。でもそれは、あなたが一人の人間であるということの証明でもあると思う」
「…………」
「あなたには未来がある。だから、これから自由に生きていきましょう?…何か、やりたいことはある?」

 優しく語り掛けてくる言葉に上げていた視線をまた落とし、椅子に浅く腰掛けたまま、レイはぽつりと言葉を返した。



「……分かりません。…たぶん、私は三人目だから…」



「「……………」」

 何となく無言で目を合わせる美女と美青年。
 見詰め合うその姿は、そこだけ見ればよく売れそうな写真になりそうだった。

「…ギリギリの発言ですね、ミサトさん」
「…マリューよ」
「ああ、そうでした。でも、よく似てますよね」
「…何がかしら?」
「顔とか、声とか、髪型とか、胸の大きさとか」
「セクハラよ、キラ君」
「何も知らない少年を脅していきなりロボットに乗せて実戦に放り出したりとか、なのに妙な罪悪感から中途半端な優しさでたまにかばったりするとことか、なのに戦いが始まったら容赦なく、策も無く戦わせることとか」
「…………」
「過去に囚われてるっぽいペンダントをしてるとことか、紆余曲折の末にくっついた恋人が自分の信念に従って死んじゃったりとか」
「ムゥはまだ死んでないわよっ!」
「そうですね…宇宙空間でヘルメット無しで生き延びたんでしたよね…本当にナチュラルなんですかね?続編が映画じゃなくて新シリーズだったら、加持さんも生きて出てきたかもしれませんよね…」
「………っ」
「ああ、そういえば、予告でナレーションをしてるとこも同じですね」

 極めつけににっこり微笑む、周りの大人達の思惑に人生狂わされてる主人公、キラ・ヤマト。

「…そういえば、ちょっと前には奥さんを亡くしたために世界を混沌に導いちゃった人もいましたよね…髭は無いけど」
「…ええ、いたわね」
「人付き合い苦手な人が恋愛結婚の末に権力持つと碌なことが無いって…世界の常識なんでしょうか?」
「そうかもね…」

 もう、ちょっとどうでもよくなってきているミサト…では無く、マリュー・ラミアス三十路前。
 こんな所にも共通点が…。

「レイ・ダ・バレル君」
「レイ・ザ・バレルです」
「失礼。…君、このままだと大変なことになるよ?」
「…どういう意味でしょう?」
「逃げちゃダメだよ。お父さんから。何よりも自分から」
「私に父はおりません」
「キラ君。それ、私のセリフ…」
「あれ?認めるんですか?」
「っ!?」
「それはともかく、君、このままだと、次のシリーズじゃ仮面着けて登場するハメになるよ?」
「え…」
「仮面は代々金髪が着けるってのが相場なんだよ。それに、君はここ二人の仮面達と縁が深い…深すぎる。次はきっと君の番だ。いいの?それで本当にいいの?」
「嫌です!」

 コンマ一秒の間すら空けずに拒否した少年に、満足げに微笑む。

「よく言ったね。じゃあ、これから、君が仮面を着けなくて済む新しい世界を作っていこう?」
「やります!僕がやります!」

 こうして、キラは新しい仲間を手に入れた。
 詐欺師度のレベルが3上がった。

 人生の荒波に飲まれまくり、少年は強かに腹黒く成長したらしい。

 何が何やら…。







 …その頃、ザフト艦の方で、銀髪おかっぱの青年が、副官の色黒金髪に奴当たりしながら、

「すまんなぁ…わいはお前を殴らんと気がすまんのや」

 と、エセ関西弁で呟いていた…かどうかは定かでは無い。
 だが、生え際がヤバ目の青い髪のメカオタクが、幼馴染の彼を夢見る瞳で想いながら…

「…僕は君に会うために生まれて来たのかもしれない…」

 とほざいていたことは、偶然通りかかってしまった黒髪赤目の少年により、瘴気に当たったかのように悪い顔色で報告されている。





 
おわり

 終了〜〜。
 ははは…すみません。
 分かりました?エヴァネタです(苦笑)
 レイが無表情で、フラガパパ、クルーゼと合わせての
 三人目と気づいてから…パロせずにはいられません
 でした(苦笑)
 てか、色々と被ってますよね…エヴァと。
 種の時からマリューはミサトだな〜と思ってましたが、
 運命で『シン(ジ)』『アスカ』『レイ』と揃ったときには、
 笑うより脱力を禁じ得ませんでしたよ(苦笑)