ヴェサリウスの通路を自室に向かって進んでいたキラは、にこやかに微笑む幼馴染とばったり出くわしてしまった。

「やぁ、キラv今日も可愛いねv」
「知ってる。分かりきったこと言わないでよ。誰に向かって言ってるの?」

 はっと鼻で笑い、固まっているアスランを睨みつける。

「だいたい、独創性の欠片も無い、事実をあるがまま、そのまんま述べる行為に何の意味があるわけ?そんなのコーディネーターじゃなくたって出来るよ。それこそ、言葉を話し始めたばっかのナチュラルの子供でもね。つまんないことで時間とらせないでくれる?僕、君と違って忙しいんだ」

「………………」

 そこまでを一気に言い切ると、キラはまだ何も言えないまま固まっているアスランを残し、今度こそ誰も邪魔する者のいない場所へと向かった。

「…ボロミソですね」
「あれだけの呼びかけにあそこまで返すとは、やはり只者じゃ無いな…キラ・ヤマト」
「けどさぁ、アスラン次に姫さんに会った時も、ぜってー同じこと言うぜ?」
「ええ…アスランにとって『こんにちは』と同じ意味ですからねぇ…」
「アホだな」

 一部始終を目撃した同僚達は、ここ二日ほど貫徹で整備にあたっていたせいで、極度の眠気でキラの機嫌が悪い所に『よく寝ました』と言わんばかりの表情で現れたアスランに対し、更に態度が冷たかったであろうことを教えてあげるつもりは無いらしい。

 そして、まだ通路の端でオブジェに成り果てている彼に、同僚達は声をかけることも無くその場を去る。

 彼等のアスランに対する認識に『タイミングの悪い奴』という項目を追加して…。




 
おわり