いつもは明るいく楽しげな声が響く八神家で、声をひそめ、静かにそれは語られていた。


「…そうして二人は手を繋ぎ、ゆっくりと前に進む。だがその時ふと、遠くの方からピチョーン、ピョーンと水音が響いてきた」

「「………」」

 普段とはかけ離れた静かな語り口に、空とヒカリは息を呑んでじっと聞く。
 無意識のまま縋る様に自然に手が繋がれ、じっとりと汗をかく。

「二人は初めは気にしなかった。いや、気にしないようにしていた。何故なら、その水音はさっきまではずっと遠くから、それも後ろから聞こえてきていたはずなのに、自分達はそれから遠ざかっているはずなのに、次第に近づいて来ている気がしたからだ」

「「………(ごくり)」」

 唾を飲み込む音がやけに響いた。

「…ピチョーン…ピチョーン…気のせいじゃない。その音はだんだん近づいて来る。十メートル…五メートル…そして」
「「…っ」」


「ギャ―――――っっ!!」


「「きゃああああああっっ!!」」


 突然叫んだ太一の声に、二人は縮こまって悲鳴を上げた。

「……なあ、今のトコ、怖かったか?」

 さっきの叫び声は何だったんだと言いたくなるような平然とした表情で太一が言った。
 それに空とヒカリはきょとりと顔を見合わせる。

「え?ん?…特に?」
「じゃあなんで、悲鳴を上げたんだ?」
「えーと、つられて?」
「ノリ?」
「…ま、そんなもんだわな」

 告げられた言葉に、ふっと太一が笑みを零す。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!他には何かない?」
「ん?他にか?」
「え?今の終わり?オチは?」

 つい一分前までの雰囲気を根こそぎ覆し、ほのぼのとした空気が部屋を満たす。

「……何、やってんだ?お前等…」

 なんとも言えない表情で扉を開けたヤマトの呟きに返って来たのは…。


「「「暇つぶし」」」


 奇麗に揃った返答に、ヤマトが全力で回れ右して扉を閉めたくなったのは…仕方が無いことなのかもしれない。

 現実には、部屋の中に問答無用で引き吊り込まれてしまったのだが…。








 その後、部屋の中で何があったのかは、そこにいた四人と、扉の取っ手にかけた手を細心の注意を払って離し、空気に溶け込む心意気で何も言わずその場を後にした、光子郎だけが知っている。






 
おそまつ



 …すみません、出すはずだった話を急遽取り止めて
 何となく出て来たこれをUpです。(なんのこっちゃ/汗)
 うん、ヤマトってこういう役回りよね〜(笑顔)
 次こそはもっと長い、ちゃっとした話を出したいです(汗)