2003年某月某日…冬。







 昼休み…けれど外は、どか雪だった。

 雪に弱い都会の公共交通機関は今頃軒並み停止しているだろう。
 かくゆう自分達、学生の通学手段は自分の足か自転車、なのだが…みるみる内に降り積もってゆく外の様子に、帰れるかどうか不安になってしまう。
 天気予報は一日雪とか言っていたが、ここまで酷く降り積もるとは言ってなかった。

「大雪警報って…出てんのかな」
「出ても…休校にはならないんじゃないか?学校休みになんのって、『強風』とかの台風関連だけだろ?」
「雪じゃ…休校になんないのか?」
「つか、今休校になったって、この雪ん中帰りたくねーよ」
「「「そりゃそーだ」」」

 窓の珊にすら数cm積もり、風で飛ばされては数cm積もり…の繰り返しをしている外界を呆然と見つめ、生徒達は現在の空模様の様な心に溜め息をついた。

「普通に帰りゃ10数分の道だけどさ、今日はどっかで遭難したりしてな〜」
「あ〜ありえそうだな〜」

 あはははははは〜と力なく笑った彼等の耳に、ぼそりと声が届く。

「遭難した時の心得…」
「いち、風向きの反対に穴を掘ってなるべく動かない。体力温存のため」
「にー、雪をそのまま口にしないで一度溶かしてから飲む。雪のままでは内臓から凍傷にかかるため」

「「「……………」」」

 呟くだけ呟いてぼーと外を見ているクラスメイトの三人を、今度は唖然と見る。

「……八神?」
「気にするな。覚えといて損は無いけどな」

 不審気に声をかけた者に目を向ける出なく帰って来た言葉。
 そしてそれに傍らのヤマトと空も頷いている。

「…この程度なら問題ないだろ」
「空模様も直に止みそうな感じだしね。授業が終わる頃には止むでしょ」
「問題は明日の朝だな。解けた雪が凍ってからの方が危ない」

 さて、というように揃って教室を出て行く彼等の姿をぼんやり見送る。
 おそらく、パソコン教室か生徒会室にでも行ったのだろう…あの口ぶりでは心配することは無さそうだ。

「…なんであいつ等の言葉って、妙な説得力があるんだ?」
「さあ…けど、いいんじゃん?今日は帰れそうだし」
「だな」

 そうして、遅れていた昼食に入る。





 そして本日最後の授業が終わる頃…雲の切れ間から太陽が覗いていた。






 
おわり