うに・トロ・いくら・あわび・鯛…。






「…なんです?それ…」
「ヤマトの嫌いな食い物」
「それは…」

 太一に告げられた言葉に、光子郎は驚いて目を見張った。

 実は今の今まで、あのサバイバル生活を経験した自分達は好き嫌い等無いと思い込んでいたのだ。
 選り好みする余裕が無かったとも言うが、あの旅の途中、食事に関して文句を言ったのはミミと、最初の常識に縛られていた頃の丈くらいだ。
 しかも、あのどんな食材でも調理してしまうイメージのあるヤマトに好き嫌いがあるというのは、光子郎を愕然とさせるに充分だった。

「珍しいだろ」
「ええ…何か食あたりとか起こした過去でもあるんでしょうか?」
「んにゃ。ただの食わず嫌い」
「は!?」

 にやっと言い放たれた言葉に、光子郎は今度こそ言葉を失った。

「ヤマトはたいていの『高級食材』は食わず嫌いなんだ。まかり間違えて好きになっちまったら食費に大打撃だってな♪」

「…………ああ、なるほど」


 楽しげに明かされた真実に、光子郎の中に浮かんだ疑問がすとんと落ちた。




 
おわり