この話は芸能物です。
設定は色々弄繰り回して、桃生の好き放題です(苦笑)
これは、遊技場のVOTEでご協力頂いております『お遊び投票』より発生した話です。
とりあえずの『お試し品』ですので、皆様の反応が今後を左右致します。
どうしましょう?(苦笑)とりあえず、気になる方は読んでみて下さいませ。

 




















 フジテレビのとある一室に、たくさんの大人達と共に今をトキメク子役達が集められていた。
 この春から始まるドラマ、『デジモンアドベンチャー』の顔合わせのためである。

「あ、太一〜!」
「空?お前もこれに出んの?」
「ええ。舞台の方もあるし、オファーが来た時はどーしよっかなって思ったんだけど、太一も出るって聞いたからいいかなと思って」

 にっこり笑った空の顔の裏には、負けず嫌いの面が潜んでいる。
 同じ劇団の二枚看板と言われている太一と空は、母親同士が仲が良かったことから始まった幼馴染で、太一が好きなものは空も好きになったし、空が興味を示したものには太一も興味を持った。
 そんな風に、お互いが一人っ子だったこともあって、切磋琢磨し合って磨き上げて来た二人の名は、いつの間にか業界でも有名になっていた。

「で、下でこの子に会ってね?」
「この子?」

 空の後ろに隠れていた少女が、促されてひょっこりと顔を出す。
 それを見て太一は、空の悪戯が成功した楽しそうな視線に気づきながらも目を見開いて驚きの声を上げた。

「ヒカリ!?」
「太一お兄ちゃん、久しぶりv」

 ててて、と太一の傍に寄り、嬉しそうに彼の手を掴んで見上げて来たのは、母方の従妹、ヒカリだった。

「お前…何でここにいるんだ?」
「えへへ♪ヒカリね、太一お兄ちゃんの妹役のオーディションに受かったの!だから太一お兄ちゃんと一緒にドラマ出れるんだよv」
「本当か!?にしても…よくおばさん許したなあぁ〜、身体もう大丈夫なのか?」
「うん。無理しなければもう大丈夫ってお医者様が許してくれたの。だから、太一お兄ちゃんの出るドラマのオーディションなら受けてもいいって。だから平気」
「そっか、頑張ったな」
「うんv」

 ヒカリの視線に合わせ、覗き込むように優しい瞳を向けていた太一が、よしよしと頭を撫ぜると嬉しそうに微笑む従妹の姿に、太一自身も嬉しくなる。

 昔から身体の丈夫な方では無かった従妹は直ぐに体調を崩して寝込んでいた。
 そのお見舞いにとよく顔を出していたいた年上の従兄にヒカリが懐いたのは、自然の成り行きだっただろう。
 そして、寝込んでいる時に顔を出せば嬉しそうに微笑み、元気な時に遊びに行けば、あひるのように後ろからぴょこぴょこと着いて来るこの従妹を、太一も本当の妹のように思っていた。
 更に、太一といることの多い空のことも、姉の様に慕っていた。

「…空」
「了〜解。フォローは任せて♪けどまあ、ヒカリちゃんの登場は、もうちょっと後みたいだけどね」
「ああ。ヒカリ、出番までに体調整えとけよ?」
「うん、頑張る!」

 太一の言葉にむん!と気合を入れるヒカリ…その姿に思わず笑いが零れた。

「ああ、いたいた。太一、空!」
「え?丈さん!?お久しぶりです」
「お久しぶりです!一瞬誰かと…」

 黒ぶち眼鏡の少年の登場に、太一と空はすっと背を伸ばす。
 太一達の劇団出身の先輩であり、抜群の演技力を持ち、どんな役でもそつなくこなす彼は二人の憧れであり、また頼れる兄貴分でもあった。

「あはは。今度の役は真面目一辺倒なガリ勉君だって話だからね、眼鏡に慣れとこうと思って。今回は君等と共演だって話だから楽しみにしてたんだ〜♪」
「ありがとうございます。それにしても、もう役作りですか?シナリオもまだなのに…」
「まあね。どんな変更があっても、ガリ勉君からバンドマンとかの変更は無いだろうからいいでしょ。で、太一。その子は?」
「あ、オレの妹役に決まった八神ヒカリです。ちなみに、本当のトコはオレの従妹なんですけど」
「へぇ〜。初めまして、僕は城戸丈だよ」
「は、初めまして!八神ヒカリです!…あの、城戸さんって、前のお昼のドラマに出てた…」
「あ、あれ観てた?中々の熱演だったでしょ♪」
「て、ヒカリ!?…ああ、そうか…学校休んだ時におばさんが観てたのか?」
「う、うん…」
「うわ…おば様…あれを子供の前で観るのは、ちょっと…」
「あはは、そうだよね〜て、演じてた僕が言うことじゃないけど」

 爽やかに笑う丈に乾いた笑いを返す太一と空。
 ヒカリはその下でおろおろとしている。

 丈の演っていたのは、明治時代のある華族の令息の役で、表向きは上流家庭の嫡男らしく品行方正な美少年だが、裏では父や母それぞれの愛人達に、冷酷に、残忍に、時には甘く絡んでいく、どろどろした世界に相応しい計算高い少年だった。
 それを業界で絶賛されるほど見事に演じきったその役の面影は…今は無い。

「太一だって、秋の特別枠でやってたドラマ…あれの役はいい味出してたじゃないか」
「え、あ、いや、その…み、観ました?」
「もちろん♪唯一の肉親だっていう母親の手術で、病院の廊下で方膝抱えて耐えてる場面や、屋上のフェンスに縋って泣き崩れる姿なんて、正にマニア垂涎の的って感じだったね」
「何のマニアですかっ!」
「まあ、色々とねぇ〜♪ねぇ、空」
「ですね。色々とv」

 褒めているのかからかっているのか分からない言葉に溜め息をつき、ふと反らした視界に見覚えのある姿。

「あれって…」
「何?太一」
「ほら、あの子」
「え?…ああ、MIMIだわ。子役モデルの…最近雑誌でよく見るけど…あの子も出るのかしら?」
「ああ、彼女ならさっき挨拶しに来たよ。今回初のドラマ挑戦だって。何か歌も歌うらしいけど」
「てことは、事務所が本腰入れて売り始めたってことですね。今度のドラマは、あの子にとっても大きいわけだ…」

 緊張した面持ちでマネージャーらしき女性と話しているMIMIに、太一と空は視線を合わせてにっと笑い合う。

「…どうする?」
「さあて、どーしようか?」
「ほどほどにしときなよ」

 やれやれと言いたげな丈の言葉に、二人は揃って首をすくめた。

「あっちもこっちもって手出す人はあんまり好きじゃないんですv」
「モデルと歌の実力は知りませんけど、演技はど素人なんでしょ?態度次第、ですね」
「演技力ははなから期待せず…か。ふふ、厳しいね?君等も」

 少し人の悪そうな笑みを浮かべる彼等の姿に少し目を白黒しつつも、ヒカリは太一の服の裾をしっかり握って離さない。
 何を言っていたとしても、彼が自分の大好きな従兄であることは変わらない…まるでそう主張しているようなヒカリの仕草に、太一は優しく笑って『妹』の頭を撫でた。

 ふと、部屋の空気がざわめき、それに合わせて入り口を見れば、金髪の二人の少年が入って来た。
 その髪と瞳の色から兄弟だろうことは予想出来るが、顔つきはあまり似ていない。

「…ハーフ、かな?」
「いや、クウォーターだって。某バンドのヴォーカルの息子達だってさ。二人とも今回のドラマで芸能界デビュー」

 たんたんと情報を明かす丈に、三人の視線が集まる。

「何?」
「いつも思いますけど、丈さん、どこでそんなに情報掴んで来るんですか?」
「まあ色々とvて、これは泉から聞いたんだけどね」
「泉って、泉光子郎?前丈さんと同じドラマに出てた…」
「そう。彼等と同じ事務所なんだって。泉もこのドラマに出るって話をした時に聞いたんだよ」
「へぇ、あいつも出るんだ。これは結構面白くなるかな♪」

 楽しそうに笑ってもう一度金髪の兄弟に視線を送る…と、兄の方と目が合った。
 一瞬、挑むような視線を返されるも、直ぐに彼の方から外され、そのまま大人に呼ばれるまま奥へと消えて行く。

 その様子に少し目を見開くが、次いで目を細めてふっと不敵に笑う。



 本当に、楽しくなりそうだ…と。





 
未完(苦笑)