生徒会から配られたアンケート用紙。



 住所・電話番号を書く欄は無いのに、身長・体重・スリーサイズを書く欄はある。
 他にも、趣味・特技・好物・好きな色・好きな異性のタイプといったスタンダードな質問から、好きな花・好きな同姓のタイプ・好きな動物・守備範囲・プロポーズならこんな言葉・好きな髪の長さ・キスするのに理想の身長差、等等コアな項目も目白押しだった。

 …が、現生徒会の異常さは、ある意味慣れっこになってしまっているお台場中の生徒達は、ほぼ、何の躊躇も無くそれを埋めていく。

 そしてここにも、アンケートの提出期限を目前に控え、人気の無くなった教室でいつものメンバーが揃っていた。

「…太一、『得意料理』何にした?」
「ん〜、『キンピラゴボウ』にしといた」
「え?太一さん『オムライス』じゃないんですか?」
「それでもいいんだけど、最近キンピラ作んのにハマっててさ」
「なるほど。ヤマトさんはどうしたんです?」
「どーすっかな〜…『鯖の味噌煮』にでもすっかなぁ」
「ああ、美味しいですよね〜」


「あんた達間違ってるわっ!」


 にこやかに話す男共に、空がガタンと立ち上がってそう叫んだ…が、帰ってくるのはきょとんとした三対の瞳…。

「……変か?」
「変よっ!おかしいわ!十四の男の『得意料理』がそれなんて間違ってる!」
「どこがだ?」
「何でそんな所帯臭い和食メニューを出すのよ!?もうちょっとこう、若者らしいもの書きなさいよっ!」
「若者らしいもの…ねぇ…」

 息も荒く断言した空の言葉に太一達は目を合わせ、おもむろに消しゴムを手に取りその項目を消していく。

「しょーがねえな…じゃあ『ホットビスケット』にでもしとくか…こないだ部の奴等にも好評だったし」
「ああ、あのヨーグルト風味の!僕もご相伴に預かりましたけど、とても美味しかったですよv」
「そか?じゃ、また作ってやるな♪」
「楽しみにしてますv」
「ならオレは、『キャロットケーキ』にしとくかな」

 平然と書き込まれる洋菓子の名称。
 もちろん、それが本も見ずに彼等が手際良く作れる物の一つであることをここにいる者達は知っている。



「…っ。あんた達絶対間違ってるわ〜っ!!」



 …哀しいかな…四人しかいないこの場所では、空の絶叫に同意してくれる者はいなかった。




おわり