「…えーと、卵お一人様1パック。あ、太一、牛乳も持ってくれ」

「了解。ヤマト、こっちの『DAKARA』は買わなくていいのか?」
「ああ。今回はパス。一応特売だが、それの底値は168円だ。10円も高い」
「そっか…流石にオレも、底値まではチェックしてなかったな〜けど、お前ん家別に貧乏でも無いんだから、そこまで徹底しなくてもいいんじゃねぇの?」
「阿呆!生活費切り詰めれば、余った分をオレの小遣いとして接収出来るんだ!切り詰めれるとこはとことんやる!」
「小遣いってより、『へそくり』って感じだな〜」
「なんとでも言えっ」

 漫才のような会話を交わしながら、特売コーナーから特売コーナーへと軽い足取りで移動する彼等。
 事前に特売品はチェックしてあるため、定価の商品には目もくれずに通り過ぎて行く。
 しかも、持って帰れる分に収めるためにカートを使うことは無い…。

「…空さん」
「なあに?光子郎君」
「僕、ヤマトさんって、ライブの時より特売日の方が数段輝いているように見えるんですが…」
「仕方ないわ。だってヤマト、主婦だものv」

 さ、行きましょうと、先に行った二人をにっこり笑って追いかける。
 ふと見ると、きのこ類の前で、父の下着類の特売品を購入するよう仰せつかり、別行動をしていたタケルとヤマト達が合流していた。
 そんな彼等の元へと、光子郎も『お一人様1パックまで』の卵を持って追いかける。
 もちろん、空の手にも同じものが抱えられていた。

 人数が揃った所で小休止。
 狙うは五時からのタイムバーゲン…そこで、既に披露し慣れた素晴らしいチームワークが発揮されることになる…。




 月に一度の『超特売日』…殺気だった奥様方の中、その人波を涼やかに駆け抜ける小中学生の美形のお子様達の集団がいることは、この近辺ではちょっとした噂になっていた。




 
おわり