きっと一生、この真っ暗闇の中を独りで生きていくんだと思っていた…。







 真夜中に『両親』だと思っていた人達の言葉を聞いて以来、僕はずっと独りだった。

 僕が創った見えない壁は、僕すら知らない内にいつの間にか…どうすればいいのか分からないほどに、分厚く強固になっていた。
 けれど、それはイラ立つ程に透明で、透けて見える向こう側の世界が、見えるからこそ手の届かないものであることを思い知らされた。

 いや、そう思い込んだんだ。

 本当はただ知りたくなかった。
 自分が拒絶されているのだと思い込み、自分こそが拒絶している事実に目を瞑り、遠ざけていた。

 本当は…ほんの少し力を込めれば簡単に砕け散る硝子の壁だったのに…。

 けれど、砕け散っても壁だった欠片はそこに残っている。
 僕が愚かで、弱虫で、あまりにも自分勝手な子供だった証。

 決して消えない罪の痕。

 でも…だけど、そのおかげで僕は、もう絶対に間違えたりしない。

 たくさんお母さんを泣かせました。
 たくさんお父さんを苦しめました。

 僕の行動が、僕の言葉が、二人をとても傷つけました。
 知らないままに、自分だけが犠牲者のように傷つけ続けていました。

 それでも僕は、二人の子供です。
 僕が、『お父さん』、『お母さん』と呼ぶのは、この世に両親しかいないんです。

 まだ言えない。
 言ったことが無いたくさんの言葉達。
 たくさんの感謝とたくさんの謝罪、そして…。

 知らないふりして言葉を濁すずるい僕を、穏やかに笑って許してくれる優しい人達…それが僕の両親です。


 いつか、全てを言葉に出来る知識と勇気を心に持ちたい。

 言わなくても、きっと分かってくれているだろうけれど、それでも伝えたい想いがあるから…いつか言えると信じている。






 そうでしょう?…太一さん。





 
おわり