……告白します。 八神太一、14歳。 心身ともに健康な、歌って踊れるサッカー大好きな中学二年。 年長者の受けも良く、年下からも面倒見の良さから好かれ、明るく元気で非の打ち所の無い人柄から『理想のお兄ちゃん』等、お台場中学内で行われたアンケートでも三冠に輝やく人気を誇り、にも関わらず嫉妬されそうな同学年にも友人は多い。 更に、デジタルワールドの関係上、かなりな秘密主義であるのに、それを上手く誤魔化してしまう機転の早さから中々話をはぐらかされたことに気づく者も少ないが…、『ミステリアスな所も素敵〜vv』と、本人や仲間達が聞いたら腹を抱えて爆笑してしまいそうなことも裏で囁かれている。 そんな、第三者以上から見れば羨ましい限りの『パーフェクト人間』の彼にも、悩みはあった。 贅沢な悩み…だとは思う。 今の状況にも自分にも、大して不満は無い。 もっと上へ…という思いは少なくないが、『今の自分が嫌でしかたない』という負の情念からは無縁でいられたのは…まあありがたいと思う。 拳で語る(笑)親友。 かけがえのない半身。 ツーと言えばカーで返すどころか、後頭部で表情を読む幼馴染。 一つ言えば十どころか、十五・六は理解してくれる頼もしい仲間達…そして、愛すべき家族。 実際さ、オレ達のようなちょっと変わった体験をした子どもを理解し、あまつさえ協力までしてくれる親は、はっきり言って貴重だと思う。 目に見えても、自分が直に体験したって信じてくれない人ってのもいるし、もしそーいう人が自分の親で、全てを否定されたら…やっぱり結構辛かっただろうと思うし、その点では、精神的にも肉体的にもすごく助かったのは事実だ。 そのことを共有出来た兄妹の存在にも…。 いつも寄り添うようにくっついていた妹は、はっきり言って可愛かった。 オレの服の端をぎゅっと握るちっちゃな手も、柔らかい髪の毛も、不安よりも信頼が勝る大きな目も、神様、あんたはえらいよと思うくらいには可愛かった。 『守らなきゃ』より、『守りたい』って素直に思えた。 これって、当時を振り返っても『オレってばラッキー』と思えることの一つだ。 義務感よりも使命感…それも自発的なってのが良かったんだと思う。 義務感ってのは、一つ間違えれば強迫観念になっちまうから、絶対後々無理が来る。 それを自然体で出来たってのは、無理することが多かったあの世界で、オレが追い詰められ過ぎずに済んだ一つの要因だったんだろう。 仲間達の中には、その辺のすれ違いでちょっと『闇の洞窟』にお邪魔しかけた奴等もいたみたいだし…。 オレ自身、まだあいつが一緒に旅する前に一度迷い込みかけたことがある。 てか、ピッコロモンに落とされた。 そういうトコ、あんなちっちゃな妹なのに支えてくれてたんだなって…気づいた。 だから、あいつがオレの妹で良かったって…心から思うしありがたい。 大事だし、大切にしたい。 あいつもオレを大事にしてくれるし、好いてくれてる。 そういうトコ隠さないのも、照れるけど可愛い。 誰にも言ったことないけど、あいつが呼ぶ『お兄ちゃん』って声が気に入っている。 世界中で、あいつがそう呼ぶのがオレだけだって『特別』が…実は嬉しい。 昔からオレの後をついて来たあいつ。 なんでもかんでもマネしたがって、あいつが初めてボタンかけに成功した時に側に居たのもオレだった。 なんか普通、親の役目じゃないか?と思うようなこともオレがして来たが、あいつが困った時に一番に頼るのが自分っていう事実も…結構こそばゆかったりする。 だから、今の自分に不満を言うつもりは無い。 けど…だけど、でも…あいつがたまに作ってくれる弁当なんだが…。 卵と鶏肉のそぼろで形作られた『ハート』の芸術作品は…にーちゃんかなり、恥ずかしい…。 ヒカリ、オレはお前の育て方…間違えたんだろうか…? |
おわり |