風が頬に気持ちの良い日曜日。
 最近お気に入りの、観葉植物とどこかカントリー調を思わせる雰囲気の良いカフェ…そこの日当たりの良いカフェテラスに彼女達はいた。

「…そういえば空さん。光子郎さんがまた『知りたがる心』大暴走させてるって、ホントですか?」
「あら、太一に聞いたの?何がきっかけだったのかは詳しく知らないけど、ネット情報だけじゃダメだったらしくて、図書館とか駆けずり回って調査してるわ」
「ご苦労様ですね〜」

 ほわほわと会話しながら、注文した飲み物で喉を潤す。
 ストローでかき混ぜると、中の氷がカラン…と耳に心地好い音を響かせた。

「でも、どうでもいいことだけど、ちょっと気になるなってことって…結構ありますよね?」
「あら、例えばどんな?」

 少し興味をそそられたように目で促すと、ヒカリも特に気負うことなく、手の中のストローをくるくると回しながらさらりと零した。

「芸能人とかのオーディションで、友達について来ただけだったのに受かっちゃったって話、よくあるじゃないですか」
「ええ、あるわね」
「その後、その『友達』との友情はどーなったのかなぁ…とか」
「………」

 告げられた言葉に思わず目を見張り、次いでふいっとカフェテラスから段差のある下の雑踏に目をやる。

「…そうね。ちょっと気になっちゃうわよね」
「ですよね…」

 傍から見れば、ちょっとそこらにはいないほわほわした美少女達の心温まる光景なのだが、音声を加えるとちょっと何処かにずれている。

「気になるって言えば、この間懐かしのアニメ特集っていうのやっててね」
「あ、私も観ました。お父さんとお母さんがはしゃいで観てて…」
「うん、うちも。それでちょっと気になったのが…『バカボン』って、主役は『バカボン』?それとも『バカボンのパパ』?」
「…………えーと…」
「ちなみに、『バカボンのパパ』の本名って何かしらってちょっと思ってね?」
「不思議ですね…」
「不思議よね」

 普通人はねずみが嫌いなのに、何故ミッキー○ウスは人気があるんだろう?
 黒猫に横切られるのは不吉という迷信が横行する日本で、どうして業界一位の宅配会社がクロネコヤ○トなの?
 キ○ィちゃんは世界のアイドルなのに、リボンを反対にしただけの双子のミ○ちゃんは、何故あんなに影が薄いの?

「……空さん」
「うん、分かったわ。今度光子郎君の前で呟いてみる」
「お願いします」

 にっこりと微笑み合った二人の間で、グラスの中の氷がまたカランと転がった。
 そんな彼女達の他愛も無い謎を増やす人物が追加するまで、後――――3………2………1………。

「すみませーん!遅くなっちゃいました〜!」

 紫色の髪に丸いめがねがチャームポイントの少女が、輝く笑顔で手を振った。





 泉光子郎13歳。
 彼の知識への飽くなき挑戦は、周りの多大なる協力の下、尽きることは決して無いだろう…。




 
おわり