彼等にとっての『極普通』は、世間一般での『極普通』とは、少ぉ〜しかけ離れた存在だった…。





 極普通のご家庭で生まれ、極普通に命名され、極普通に育ち、極普通に学業に勤しむ為学び舎へ通う…。
 そこまでは同年代の子供達とさして変わる所は無い。
 だが、終業チャイムが鳴り響いた時、彼等の『極普通』は一変するのだった。

 校舎の一角にあるパソコン教室からそれは始まる。
 光に包まれ飛び出た先は、『極普通』で無い『極普通』が広がっていた。

 緑溢れた…そして、少ぉし不自然な世界、デジタルワールド。

 そこへ今日も今日とて訪れた子供達。
 彼等の『極普通』は、この世界があって、初めて完成する。





「てっ!?」

 話の途中、突然混ざった小さな苦痛の声に、全員がその声の主に注目した。

「ヤマト〜、大丈夫?」
「ああ。すまん、ガブモン…小枝で擦っただけだ」
「どこだよ、ヤマト?」
「ん?ああ…」

 すぐ後に居た太一がひよいっと覗き込んで来た為、大したことは無いと証明するように患部を見せた。

「ヤマト、バンドエイドあるよ?」
「丈さんホント準備いいですね♪」
「丈先輩は昔から『備えあれば憂い無し』だったもの」
「さっすが〜♪」
「それで、太一さん。どうなんですか?」

 話が進まないとばかりに、光子郎が患部を見ている太一の方に聞いた。

「ん〜?こんなん舐めときゃ治るだろ」
「そーだ………なっ!?」

 ぺろっ

 同意しようと開いた口もそのままに固まった怪我本人。
 そして患部を舐めたのは、怪我他人の八神太一その人。
 ぎょっと息を飲んだ一同の中響いた声に、更にぎょぎょっと振り返る。

「あーっ、お兄ちゃん!それは他の人にはダメっ!」

 しばらくの沈黙の後、件の二人を指差して叫んだ本人が口に手を当てて目を反らした。

「あ」

「え?」
「え?」
「え??」

 ぽかん…と時を止めた仲間達の中、苦笑を浮かべる太一とアグモン。
 顔を反らしたヒカリの横では、テイルモンが額を押さえて溜め息をついていた。


「「「え?」」」





 それが、彼等の『極普通』な日常の一幕…。





おわり