またしても…妙な会合が開かれることが決定された。 無駄に豪華な部屋に通された少年達は、一つ溜め息をついて状況を受け入れた。 「…話には聞いてましたけど…」 「…一応ボク達、未成年だから…ね?」 天井に描かれたルネサンス調だかゴシック調だかよく分からない、とにかく馴染みの薄い荘厳さを、ぽけ…と見上げていた烈と太一を、最年長ということで一応ワタルが窘めた。 別にワタルがお酒が苦手だから…という理由の反論では無かったはずだ…たぶん。 「やだなぁ、分かってますよ。ワタルさん♪」 にっこり笑って、好き好きに席につく。 「とりあえずお茶でも…え〜と、紅茶・コーヒー・煎茶等々、色々あるけど何飲む?」 テーブルの横にあるトレイを覗き込んだワタルに、烈が元気良く手を上げた。 「ううん。そうでも無いんだけど、今気に入ってるマグカップがあってさ、それで紅茶を飲む機会が増えちゃってちょっとハマってるんだ♪」 紅茶に花を浮かべるのはそんなに珍しいことでは無いが、青や黄色の花びらが入っているのは、見た目にも楽しいものだ。 「烈君ビンゴ♪ちょうどあるよ、それ」 ワタルに手招きされて、「緊張するな〜」とかぼやきながらも手はテキパキと動き出す。 「…あ、ホント」 一口飲んで瞳を瞬いた二人に、烈は嬉しそうに相槌を打つ。 「あ〜、じゃぁ、この紅茶によく合うね。今日のお茶菓子」 テーブル上に所狭しと並べられているのは、前回と同じく焼き菓子を主とした比較的量を食べられる軽いもの。 「そーですね♪でも、コーヒーとかとも合うんじゃないですか?」 苦虫を噛み潰したような烈の表情に、太一は小さく首を傾ける。 「…何か、身長止まりそうじゃない?」 むすっと顔を歪め、カップを両手で支えてこくん…と紅茶を飲み込む。 「ホントになぁ〜、あいつらの遺伝子ってどーなってるんだか…。ヤマトもな?1/4のくせして金髪碧眼…どんどん無駄に伸びやがる」 ヒートアップする若人故の悩みを、多少苦笑気味に聞いていたワタルは、話題を降られて少し考え込んだ。 「ん〜…、ボクの場合はそうしょっちゅう会ってたわけじゃ無かったし、会えば会ったでそれ所じゃ無かったからなぁ〜。強いて言えば気づいたらボクよりずっとでかくなってたって感じだったから…気兼ねせず、荷物持ちや高い所の便利屋に使ってるけど…」 突然黙り込んだ二人を、不思議に思って見返せば、二人は互いを見やった後、ぽんっと手を打った。 「「……その手があったか」」 はは…と笑ったワタルには、二人のそんな反応も、何となく予想出来たことだった…。 「…まぁそれはともかく、お題お題…」 好き勝手言ってくれる…。 「………………」 「…何これ…」 嫌〜な顔をした烈と太一を、ワタルは爽やかな笑顔で切り捨てた。 「いや、是非話し合おう!」 「ええぇぇっっ!?」 「面白がってますv」 にっこり微笑んだワタルに、太一と烈はがっくりと肩を落として降参した。 「で、何々?これホントなの?」 握り拳と共に力説したワタルに、二人はここしばらくずっと忘れていた『諦める』という言葉を思い出したが、状況的には『言い包められる』と言った方が正解だろう。 「…オレは、設定によって違いますから…」 烈の指摘に、太一が慌てて否定する。 「オレのトコ何か変なんだって!カップリングが一定しないし、ノーマルもあるし!常時パラレル世界が交差してるっていうか…」 烈の感心したような言葉を受けて、ワタルがにっこりと促した。 「……ヤマト…です」 真っ赤になってぼそりと呟いた太一は、目の前にいるのがワタルと烈でなければ、それこそ攫われてもおかしく無い可愛らしさだった。 「そーなんだ♪聞いてる聞いてる!ブレットがこないだ虐めた人!」 本人のいない所でも、話のネタにされて扱き下ろされているとは…確かに気の毒だ。 「…いいんです。あいつはそういう役回りですから…」 太一まで認めてしまっては、彼の今後は…明るく無いかもしれない。 「…その点いいよね、烈君は」 矛先を向けられて、烈がぎくりと引き攣った。 「相手…たった一人に限定されてるんでしょ?」 「初体験、小学生の時ってホント?」 「戻んないで下さい!それにっ!」 烈が立ち上がって抗議するが、ワタルも太一も何処吹く風…瞳が悪戯っぽく輝いている。 「まぁまあ、それがテーマなんだから♪」 それは明らかに『心読ませてくれる?』という裏の意味を含んでいた。 「…騙されたんですよ、ボクは…」 不貞腐れてるだけで無く頬が染まっているように見えるのは、気のせいじゃ無い。 「え〜と、豪君っていうと…弟さんだっけ?」 ワタルの科白に反応したのは、身を乗り出していた太一。 「ほらここ…烈君の紹介欄『少々ブラコン気味』って…」 どこからか資料らしき物を取り出して覗いている二人に、烈の堪忍袋が爆発する。 「じゃぁ、ちゃんと合意の上だったんだ?」 つい答えてしまった烈に、二人は揃って爆笑する。 「ああ〜もう。勘弁して下さいぉ〜…」 力無く頭を抱え込んでいた烈が、お菓子の山を見て、ふと動きを止めた。 「烈君?どうかした?」 ワタルの言葉に、烈は嬉しそうに頷いた。 「太一さん、分けちゃいましょう!」 楽しそうに分け始めた二人に、ワタルは扉を開けて外に控えていた人にお菓子を入れる袋を持って来て貰える様頼んだ。 「お疲れ様。お互いの恋人にお土産?」 その様子を微笑ましく思いながら声をかけると、二人は一瞬きょとんとして…次いでバツの悪そうな笑顔を浮かべる。 「「…いえ」」 異口同音の科白に続き…。 「豪が喜ぶかな〜と…」 「………」 ちょっと予想していなかった返答に、ワタルは言葉を詰まらせた後、堪らず吹き出した。 「な…なんか、二人共…か、彼等のこと、忘れてたでしょう!?」 誤魔化しているのか、肯定しているのか…そんな対応がまたワタルの笑いを誘う。 「あ〜笑った!苦しゅうない。褒美にそれを遣わそうv」 そう言って、また三人で笑う。 「さっき袋を持って来て貰うよう頼んだんだ。待ってて」 ワタルが扉に向かいながら返事をする。 「……わぁ〜vオレンジ色の恐竜だ〜vv初めて見た〜♪」 続いて賑やかに入って来たのは、青い髪の少年。 「何何何何??何あれっ!?烈兄貴こんなトコにいんの!?」 突然の乱入者の出現に驚いていた面々は、その顔があまりにも見覚えのある者だったことに二重の驚きを隠せない。 「君は太一君の友達?」 元気良く頷いたアグモンを太一にバトンタッチして手渡す。 「こちらのお連れ様だと思い、勝手ではございますがご案内して参りました。それと、こちらがご要望の品でございます」 袋を受け取ったワタルの言葉に、紳士は心得た様に頷いて少し体をずらした。 「こちらの方…でございますね?」 その後ろから、ひょこんと愛らしい顔を見せたのは自分の弟分。 「鴉呼」 ワタルの言葉に鴉呼は嬉しそうに微笑み、てててっと足元に駆け寄ると、軽々と抱き上げてもらった。 「うわ――っ!うわ――っ!!何これ烈兄貴!?オレも食べた――いっっ!!」 兄の一喝に不満があっても逆らうことは出来ない。 「太一〜!ぼくも食べたい〜っ!」 既に帰らせる気満々だろう彼等の連れのために、一刻も早くこの袋を渡した方が良さそうだ。 「太一君、烈君。はい袋。早く詰めて帰ったげなね?」 くすくすと笑うワタルに、今にもよだれを垂らさんばかりの弟とパートナーを無視して礼を言う。 「それじゃぁ、今日はこれでお開きということで」 「ボク先に帰らしてもらうね〜v」 頭を下げた二人に、ワタルはにっこりと微笑んで手を振った。 「あ、ワタルさん!最後に一ついいですか?」 鴉呼を抱いたまま、それでも体重が無いかのように振り返る様は優雅で…一瞬見とれた。 「あ、えっと。ワタルさん…ホントに心が読めるんですか?」 その言葉に浮かんだ笑顔は、人々を救い、支えて来た『救世主』の笑顔…。 「そんなわけ無いじゃん♪」 そんな顔で言う言葉では…無い。 「じゃあね〜ん♪」 去って行く後姿を呆然と見送り、太一と烈は、ちょっとだけ苦い笑みを浮かべて顔を見合わせた。
『年の功』…そんな言葉が脳裏に浮かんだが、口に出すことだけは…無かった。
おわり |
何だかね。
何々だかネ…(苦笑)
やっぱり、よく分からないコンセプトの元始まった話は、
よく分からない結末を迎えてしまいました(笑)
次があるかどーかは分かりませんが、もし次があったら
…また読んでやって下さいませ(笑)