三人の金髪美形が、とある豪奢な部屋に集められ、お茶と茶菓子を囲んで座っている。 「…まぁ、いい。話せと言うなら話そう」 ヤマトの不安気な言葉に、二人はあっさりと言い放った。 「切り替えは早い方なんだ」 …早すぎるよ…とヤマトは思ったが、口に出すことは無かった。 「まぁ、何だな。オレ達は『金髪』ってことで集められたんだな?」 焼き菓子をぽりぽりと口にしながら、虎王は不思議そうにブレットを見やる。 「?…オレはお前等と違ってワタルとデキてないぞ?」 ガタガタガタ―――ン!! 淹れた紅茶を虎王の前に置き、ブレットが席に座り直した時…ヤマトが勢いよく椅子から転がり落ちた。 「Mr.ヤマト?どうしました?」 何事も無かったかのようにお茶をしだした二人を、ヤマトは奇妙な物を見るように呆然と見つめた。 「ほぅ…美味いな。香もいい」 内容はともかく、穏やかな雰囲気を醸し出す二人…ヤマトはやっと立ち直り、椅子に座り直した。 「あの…もしかしてお二人は、お知り合いなんですか?」 翠と藍の二対の瞳がヤマトをきょとんと見つめ、続いて互いに視線を移した。 「…そういえば、初対面だな?オレ達は…」 言って苦笑い。 「あの…?」 渡されたのは、桃呼発行・桃生真野著『MIX!!』(笑)。『ワタル』と『レツゴー』のジャンルミックスのお話です。 「『MIX!!』と言えば、お前。オレと同じ場所に居ていいのか?」 誰に向けられた言葉かはさておき、ヤマトはとりあえず資料を読み終えたようだ。 「…分かりました」 突然の話の変化について行けないヤマトだったが、その斜め横で虎王がぽんっと手を打った。 「ああそれだ。その話しなきゃなんだよな?それで、え〜とヤマト?…誰だっけ?」 がたんっと音を立て、驚愕に目を見開いたヤマトに、ブレットは気の毒そうな視線を向けた。 「藤の作品は、元々カップリングが頑固で『ワタル』だと『友情』。『レツゴー』だと『ブレ×烈』…と、一度決めたものはてこでも動かさない傾向があるんです…それが『デジモン』だと『八神太一総受け』と銘打ち、明確なカップリング指定を避けている節があります」 「これが役不足ということか?」 虎王が既に魂の抜けかけているヤマトを指差し、ぐっさりと止めを刺した。 「………Mr.虎王。もう少し遠回しな言い方を…」 ブレットのフォローも窘めるというよりは、駄目押し…肯定に他ならない。 「まぁ、とりあえず…メインはこいつなんだろう?太一とやらもこいつに惹かれてるってことだな?」 流石にまずいと思った二人が、取り繕うように笑顔を浮かべる。 「得意…?………家事…とか…」 どんよりとした空気を漂わせ、ぼそりとヤマトが呟いた。 「家事?家事…て何だ?」 ブレットが不思議そうに虎王に応対するが、虎王は怪訝な顔のままさらりと一言。 「『男子厨房に入るべからず』…じゃないのか?」 ずんっ…とヤマトの頭に巨大な石が乗っかった。 「それは…昔の話では?コックとか板前とかは男ですし…」 「一度着た物をまた着るのか?」 「は……………?」 ヤマトの瞳が大きく開かれる。 「…彼、王族出身だそうですから…」 絶句。 「どこがいいんだろうなぁ…」 豪奢な部屋の豪華な椅子にゆったりと腰掛け、長い金髪をさらりと流し…高そうなティーカップを違和感無しに傾けながら、理知的な藍い相貌がヤマトを見つめた。 「…Mr.ヤマト。少々顔色が悪いですよ?今日はもう帰られた方が…」 虎王はテーブルの端に置かれていた鈴を取ると、チリ――ンと鳴らした。 「…お呼びでございますか?」 正装した初老の男性が静かに扉を開け、上品に頭を下げた。 「彼が帰られるそうだ。案内を」 人に命令することに慣れた仕種だった。その様子を呆然と眺め、ヤマトはよろよろと彼について退室して行った。 「……………」 気の毒そうに見やっていた扉から目を離し、テーブルの下から一枚の企画書を取り出し溜め息を零した。 「ところで、Mr.虎王?本当に一度着た服は着無いんですか?」 ブレットは少しほっとしたように力を抜いた。 「そうですか〜…ちょっと安心しました」 茶目っ気たぷりにウィンクした虎王に、ブレットも笑って頷いた。 「…ところで、ブレット」 少し冷めてしまった紅茶を含み、くるみの付いたクッキーに手を伸ばしながら続きを促す。 「お前ら、本当はどこまで進んでるんだ?」 紅茶を噴出しかけ、もう少しで見っとも無い醜態を曝す所だったブレットの姿は、彼の仲間や恋人が見れば驚きに目を丸くしたかもしれない…。
おわり |
…何がやりたかったんでしょう…。
きっとヤマトさんを虐めたかっただけなんでしょうね…。
それでは、太一さんとワタルと烈君が出てくる次回作
『カリスマリーダー囲炉裏茶屋』に御期待下さい。
…まだ続けるつもりなのか…?(汗)