もしも次に会えたなら…。

 

 いつか君に会えたなら…。

 何を話そうか。
 ここもね、色々変わったんだよ。
 森や山や海や草原…綺麗な所がたくさん出来たんだ。

 太一と歩いた所が少しずつ変わっていってしまうのは、やっぱり少し…ちょっとだけ淋しいけれど、でも、その分どこがどんな風に変わったのか、全部教えてあげられるように、今皆でデジタルワールド中旅をして回ってるんだ。

 ぼくらが行ったトコだけじゃないんだよ?

 ヤマトとガブモンが行った所。
 ミミとパルモンと丈とゴマモンが行った所。

 皆でご飯食べた丘。
 珍しく見張りを立てないで眠れた洞窟や、太一が服ごと飛び込んだ湖。

 ヒカリが見つけた花園や、タケルが迷ってた湖。
 ヤマトとケンカして、泣かせちゃった雪原。
 空と丈が捕まったっていう墓地。
 ミミがお姫様していたゲコモン達のお城。
 光子郎が心を獲られたっていうお店のあった大きな山。

 話したいことがいっぱいだよ。

 今なにしてる?
 怖いことはない?
 おなかはすいてない?
 今でもたまには、ヤマトとケンカしてたりするのかな。

 皆には内緒。

 ホントはね…朝起きて、太一がいないことを思い出すと悲しくなるんだ。
 でも、泣かないって決めてる。
 ぼくが泣くと皆が淋しくなっちゃうのを知ってるから。

 あの頃の、皆の前に立って…必死に頑張っていた君の姿を思い出すよ。

 皆に向けた背中だけは自信あるみたいなふりをして。
 でも、隣に立ってたぼくにだけは、君の不安気な表情を見ることが出来た。
 誰にも見せない弱音を、ぼくにだけは見せてくれていた。

 そのことがとても嬉しかった…。

 だってぼくは、君のためだけに生まれて来たんだから。

 君に出会うために。
 君と共に戦って。
 そして、君を守るためだけに。

 だから、君がぼくに全てを見せてくれていることが…とてもとても嬉しかったんだ。

 

 …だから太一、一人で我慢したりしないで。

 つらいことも悲しいことも、ぼくにだけは話して。
 太一は一人じゃない。
 ぼくがいる。
 ぼくが太一についている。

 ううん、ホントはぼくだけじゃない。
 皆が太一の側にいるよ。
 皆が太一を大切に思ってるよ。

 だからお願い…誰にも知られないように、一人で泣いたりしないで…。

 

 だけど今は、拳を握り締めて一人で耐えていた太一の気持ちがよく分かる。

 ぼくが我慢しないと、ぼくが平気なふりをしてないと、皆が哀しくなってしまうから…。
 でも大丈夫。

 平気なふりも、何でもないみたいな笑い方も、全部太一が教えてくれた。
 小さな言葉も、何気無い仕種も、太一のことなら全部全部覚えてる。

 だから大丈夫。
 皆を支えていくよ。

 大好きで、大切な仲間達だから…支えていってみせるよ。

 犠牲じゃない。
 義務でもない。
 これは自分がやりたいこと。
 自分で考えて、自分で選んだ道。

 太一が教えてくれた『大好き』ということ。

 だから、だから…ここから遠くて、何よりも近い君に、ぼくの想いが届きますように。

 

 淋しくない?
 怖いことはない?
 おなかはすいてない?

 太一の笑顔が大好きです。
 君の笑顔を守れるように。
 君の心を守れるように。

 どんなに遠く離れていても…ぼくの祈りが、君の全てを守れるように。

 

 ぼくは、いつでも君のことを想っているよ。

 

 

 忘れないで。
 ぼくがいつでも、君のことを想っていることを…。

 



おわり


 どこかしらテイマーとパートナーデジモンって似てる
 よなぁ〜という思いから生まれた話でした。
 デジモンって、ホントに健気ですよね〜v(しみじみ)